これって部内恋愛ですか

 それからの雄太郎との会話は、元々、黒谷との喧嘩について話し合っていたこともあって、しばらく戯れた後に雄太郎が軌道修正をして終わった。

オレは雄太郎の真っ赤になった顔を見た瞬間から、何を話してもドキドキが静まらなかったのに、雄太郎はグラウンドを出る頃にはすっかり落ち着いているようだった。


「ふわぁ〜。ねむ……くない」

寮母による夜の点呼も終わり、ベッドに寝転びながらあくびをする。

ごろりとベッドに寝転ぶと、練習や黒谷との喧嘩で溜まった疲労がベッドに吸い込まれていくような感じがする。

それなのに、目を瞑ると雄太郎の顔が浮かんでくる。

晩飯も雄太郎と食べて、風呂だって一緒に入って、いつもと変わらない寮の時間を過ごしたはずなのに、二段ベッドの上段で雄太郎が小さく動いてベッドが軋む度に、雄太郎の照れた顔を思い出してドキドキしてしまう。

(あーやば……)

夕焼けに照らされながら、恥ずかしそうに笑う雄太郎。

片言で好きだと言ってくれた瞬間のことを思い出すと、眠たいはずなのににやけてしまう。

目を瞑れば雄太郎の顔が浮かんで、目を開けば真上のベッドに寝転ぶ雄太郎が気になって眠れない。

このままでは、悶々と考えているうちに朝になってしまう。

(…………調べよっ)

オレは疲れてヘトヘトな身体を動かして、枕元で充電しているスマホを取った。

『親友を見たらドキドキする』『心臓 ドキドキ』『男同士 ドキドキ』。

今の状態をできるだけ表せるように、何回か検索ワードを変えてインターネットの検索窓に打ち込んだ。

(オレ、やっぱユウちゃんのこと好きになっちゃんたんかな……)

検索して出てきた結果は「恋」か「心臓の病気」だった。

検索結果には、男友達を好きになってしまった人の悩みなんかにもヒットして、オレと同じようなことを言っていた。

そもそも恋か、心臓の病気は究極の2択すぎる。

これまでずっと一緒に過ごしてきたのに、落とし穴にドボンと落ちたみたいに恋愛対象になるってあるのかな。

考えれば考えるほど混乱してくる。

こんなこと雄太郎本人には相談できないし、1人で抱え込んでおけそうにもない。

ラッキーなことに明日は月曜日で部活が休みだ。

黒谷との喧嘩の仲裁もしてくれた林にでも相談してみよう。

解決するかは分からないけど、1人で悩むよりはマシだ。

明日、林にこっそり相談してみよう。