ピリリッピリリッ 風山の携帯が鳴っている様だ。 ピッ
「はい…、なんだ…美加か…。」
「ねぇ…あの女の人探してるんだよね…?やめた方が良いと思うよ…。」
「…、どうしてだ?」
「さっきさぁ。…『同窓会』ってビデ…。」
「見たのかお前っ!?なんでお前が持っているんだよっ!!?」
「そう言えば…あの子全然生きた感じがしなかった…。声も姿も…何もかも…。」
風山は酷く荒れていた、ただ事ではないその様に恵も冷静さを失っている。
「どうしたの…!?」
「…俺の彼女が…、『同窓会』のあれを見たらしい…。」
「戻ってあげなよっ!」
風山は急いで車を自分の家へと走らせた、時間はないが放っておける訳がない。
ドンッドンッドンッ!風山は呼び鈴を叩き鳴らした。
「ハァハァッ…ッ…!おいっ!」
あたふたと手を縺れさせながら鍵を開け、部屋の中に飛び入る。刹那にして漆黒と異臭が二人を包みこんだ。彼の足には冷たいゴムまりの様な塊が触れ、目を凝らして見ると美加だった…。既に例によって事切れている、もう動く事はない:考えるまでもない状態だ。
「…ねぇ…、どうしたの…?明かりつけるよ…?」
カチッ…蛍光灯の閃光が一点を凌駕し続ける死体を照らし出した。予想通りの結果が目の前に転がっている。何故美加が…?同級生が標的じゃぁなかったのかっ!?
「どうして俺じゃないんだっ!?美加は関係ないだろっ!!」
「DVDなんかどこにもないよ…?」
恵はやり場のない怒りを避けながら、勤めて冷静に振舞った。
「DVDもないのに・・・一体どうやって・・・!?」
当たり散らすように風山が言い放つと、恵は机の上にある携帯電話を指さした。
「ねぇ…風山君、その携帯・・・。」
恵に言われて携帯に目線をやる。通知が何件も来ているようだが、問題はそこではなかった。
「…友子。」
彼は眼を疑ったが、すぐにこれが原因だと察した。携帯電話の画面には「友子さんから新着の動画があります。」と何件か通知が来ていたのだ。
「俺のせいだ…、俺が家に居なかったから代わりに美加が…!」
風山の目は死体と同じ様に我を失っていた。
「風山君のせいじゃないよ…、とにかく岡本さんの所に行きましょう!?」
恵は風山の体を掴んで車に無理に連れ戻した。
黙ったまま二人はひたすら岡本のマンションを目指した。最後にされた訳を知るため…いや、こちらから行けば助かるのかもしれないと:最後の手段でもある。時折カーラジオから入る変死体のニュース…、名前はほぼ全て同窓会のメンバーだった。
「ねぇ?彼女ひょっとして、東江美加さんじゃない…?」
恵の突然の問いかけに、風山は心の中を再び乱してしまった。
「えっ!?そうだけど…、なんで知っているんだ…?」
「やっぱり…、顔を見ていてそうじゃないかなって…。涼と私と東江さんは放課後の調教係だったの…。わかりやすく言えば友子のいじめ仲間…。」
「…そんな…美加が友子を…?」
みっともない程うろたえる風山、恵はその甘えを許さない様な程力強くうなずいた。
「私は友達付き合い程度だったけど…、東江さんはかなり酷かった…涼と同じぐらい…。」
消し去ったどす黒い記憶を呼び覚ました彼女の表情は苦虫を噛み潰した様だった…。
「放課後、私達は集まって遊んだ後の反省会を友子に強要してたわ…。返事が隣のクラスに聞えるまでとか、モップの正しい食べ方とか…。」
「むごいな…。」
「あなた達がイジメをショーとして見てたからよ、受けを保つ為には必要な事…。」
「…」
「美加は涼が中学の時の友達で学校が終わったら涼に会いに来てたの、高校は近いけどいつも合流するのは皆帰っただった。だから、殆どの人が知らないどろうけど。」
彼女は若い昔の自分が犯した悪事を噛み砕いて説明している感じだった。
「ある時友子を近くのゲームセンターに呼び出したわ、そこでイジメようって美加が言い出してね…。なんか大好きだった父方のおばあちゃんが死んで、彼女相当溜まってたみたい。それにイジメにすっかり味をしめてたみたい、ああ言うの“ハマった”って言うんだろうね…。イジメてる時に目が生き生きしてたのを良く覚えてるわ…。」
「そんな…嘘だろ…?」
「じゃあ近所の不良と仲良かった事は?知ってる訳ないだろね、彼女がそんな子だったなんて。美加はその知り合いの不良に友子を襲わせたのよ、わかる?レイプを何も知らない友子に仕掛けたのよ?覚えてない?私達のクラスの黒板に生々しく明らかに合成じゃないレイプ現場の写真が誰かによって貼られていたのを…。」
「・・・えっ…まさか…!?あれが…。」
「黒板には“複数の男を手玉に取る友子“って派手に書いてあったからね、写真の友子も笑ってたし…レイプだって事知っているのは調教係だけ。あの笑顔も強制だし。」
「だからって…いくらなんでも誰か気付くだろ…!?」
「普通ならね。でも皆感覚が麻痺していたから…、日々繰り返されるイジメがどんどんエスカレートしていく様子をいつしか楽しみにしだしたのよ。ここで文句を言えば次は自分がこう言う目に遭う。だから皆と同じ様に喜ばなくちゃ…そんな美辞麗句で自分満足させていたのよ…私もあなたも…クラスメイト全員がね…。」
どんよりとした雲が月を陰らす、辺りはいっそう闇黒に染まりまるで過去…いや今の自分達を象徴するかの様に闇の深淵へと歪んでいく…。
「なんかワクワクすんねぇ!」
「そうでしょう~?私らさぁ~いっつも尻拭いさせられてるみたいじゃん?」
「言えてる~!誰のおかげで毎回楽しめるか考えて欲しいよねぇ?」
「…ごめんなさい…。」
「は?あんたに話ふってないんですけど。」
「マジ、ウザイんですけどぉ~?」
「よぉ美加!」
「あっ高井~、他のやつは?」
「西野と志賀川は場所探してるよ。」
「お~いっ!」
「おっ、来た来た!」
「あったぜ、ちょうど裏のゴミ捨て場が開いてるよ。」
「結構奥の路地だから誰も来ねぇよ。まっ、来たら来たで殺るだけだ。」
「そう言う事!」
「でさぁ、ゲームの方どうしよっか?」
「そうね、じゃあパンチングマシーンでとりあえず。」
美加は目で合図した、全員OKサインをだす。もちろん友子はつっ立ったまま了承するはずもなく、成り行きを成す術なく見守るしかない。 バコンッ!
「見ろっ!百四十九PTSだぜ?」
「シクった~百三十五だよ…、もう一回やらしてくんない?」
「ダメダメ!志賀川も早くやってよ、瞑想とか意味ない意味ない!」 バコンッ!
「あ…ちっくしょぉ~っ!百三十八かよ!」
「じゃあ高井が一番だね。」
全員唇の端をニタニタと緩ませ岡本を見た。一人不安に脅える彼女を男三人が囲み、人通りがない路地裏へと連れて行った。涼や恵、美加はキャァキャァ騒ぎながら後を追う。
ガタンガタンッ…、近くにあったゴミ箱がひっくり返る。
「うっ……。」
お世辞にもキレイではないその場所に友子は乱暴に倒された。男三人はこれ以上ない下劣な笑いを浮かべ彼女を見下した。
「悪いなぁ俺が先だぜ?」
そう言うと高井はあらかた脱ぎ出して、岡本の上に乗りかかった。
「うわっ!高井のやつ超シュミ悪いパンツ!ウケる!」
「ちぇっ!本気でやるんだったなぁ?」
男の後ろから割入る様に美加や涼が入ってきた。黒光りするカメラを構えている。
「ばっちり撮ってあげるからねぇ~!」
「高井っ!もっと左によってよ!その子の顔が取れないじゃない。」
「じゃぁ始めますか!」
服をちぎられ、岡本はただそこにひれ伏すのが精一杯だった。彼女達は代わりの服まで用意していて、用意周到で狡猾な悪魔であることは明白な様である。
「友子、こんなイケメンにやられるんだからもっと嬉しそうな顔しなさい。」
「そうそう!笑わないと、マジでブチ殺すから♪」
言われる事には逆らえない、彼女は笑顔を振り絞った。
「オラッ!どうした!?何とか言ってみろ!お前初めてなんだろ!?」
男は殴りながら言った、岡本の無表情に近いが苦痛と恐怖で硬直しているのは確かだ。
「これで痛くないだろ?えっ顔が痛い!?ハハハハハッ!」
岡本は楽しそうに順番を待つ男と撮影をする女を涙でボヤケた光景の中眺め、本心とは異次元の笑顔でただ終わるのを待って待って…待ち続けるだけだった。


