◯放課後・寮の部屋
啓が転校してきてから3週間が経とうとしていた。季節は12月中頃。雪がちらつき初め、最高気温が0度を下回る日も出てきた。辺りが雪景色に包まれる日も近い。
啓と七生はベッドの上に並んで座っている。壁に背中をつけて、足には毛布をかけて、暖を取りながらそれぞれの趣味に楽しんでいる。七生はゲーム、啓はスマホで音楽鑑賞。やっていることは違うが仲良さげ。
啓、片耳のイヤホンを取って七生に話しかける。
啓「そのゲーム、そんなに楽しい?」
七生「楽しい」
啓(ゲーム画面を覗き込んで)「今、何してんの?」
七生「素材集め。倒したモンスターの皮とか牙で、新しい武器や防具を作れるんだよ」
啓「ふーん……」
啓が興味津々でゲーム画面を見つめるので、七生は試しに提案してみる。
七生「……やる?」
啓「え?」
七生「興味あるなら貸すけど。ちょっとやってみて、面白かったら自分のスマホにダウンロードすれば?」
啓「んー……でも俺、ゲームってまともにやったことないんだよなぁ」
七生「まじ?」
啓「まじまじ。ゲーセンでたまに太鼓の名人やってたくらい」
七生「今どきそんな奴いるんだ……」
啓「意外といるんですよ、ここに」
そのとき、廊下から大声が聞こえてくる。何を言っているのかはわからないが怒っているような声。
啓「……何だろう?」
七生「さぁ……」
◯寮の廊下
大声に誘われて廊下に出てきた啓と七生。廊下には2人の他にも、大勢の寮生が集まっている。みんな、誰が何を叫んでいるのか気になって部屋から出てきた模様。匡と晃大の姿もある。
廊下の中心で叫んでいるのは、七生と同じクラスの赤城(ヤンキーっぽい男子)だった。いかつい見た目だが、学生鞄にはとある女性アイドルの缶バッチがついている。
七生(赤城くん……? 赤城くんの部屋は別の棟のはずだけど、どうしてここにいるんだ?)
赤城「黒川! どこにいるんだ、出てこいコラァ!」
唐突に名前を呼ばれ、啓は「え、俺?」と不思議そうな顔。周囲の視線が啓に集まり、赤城が啓の存在に気付く。
赤城「おいこら黒川ぁ! てめぇ何様のつもりだ! 人様のカノジョ誑かしやがって!」
啓「……カノジョ? 誰のこと?」
啓は本当にわからないという様子。赤城は啓の胸ぐらを掴む。
赤城「瑠流花だよ! てめぇが瑠流花を誑かしたせいで、俺が振られる羽目になったんじゃねぇか! ぶっ殺すぞ!」
七生(瑠流花……ってあの派手な人か。へー、赤城くんと付き合ってたんだ……)
七生は、瑠流花(派手目のギャル)の姿を思い浮かべる。他の何人かの女子生徒と一緒に、よく啓の周りに集まっていた。
胸ぐらを掴まれているにも関わらず、啓は飄々とした調子で返事をする。
啓「誑かした、っていうほど関わった記憶もねぇけど。クラスメイトとしてのおしゃべりの範囲内で心移りするんなら、お前の魅力が足りなかったんだろ」
赤城(顔を真っ赤にしてブルブル震えて)「何だとぉっ……!」
赤城はこぶしを振り上げるが、走ってきた数人の上級生に制止される。啓の入寮当初、七生に案内を命じ監督生①②の姿もある。
数人がかりで取り押さえられた赤城は大暴れ。
赤城「離せ! あいつを殴らせろ!」
上級生「まぁまぁ落ち着けって」
上級生「あんまり派手なことすると退学になるぞー」
赤城、そのまま外へと連行されていく。
廊下に集まった人々が解散していく中、監督生②が啓に忠告する。
監督生②「こういうことは起こらないようにしてくれないかな。寮の備品が壊れたりすると、みんなに迷惑がかかるから」
啓「……はーい、気をつけますー」
啓は「何で俺が注意されるんだよ」と不満げ。赤城が連行された方へと向かっていく監督生②の背中を眺めながら、七生は他人事のように考える。
七生(イケメンってのも大変なんだな……俺なんて、ちょっと会話したくらいで惚れられるなんて有り得ねぇわ……)
啓(ぽつりと独り言)「うーん……もう面倒だな、こういうの……」
◯翌日・教室
いつものように机でゲームをする七生、匡、晃大のところに啓がやってくる。邪気のない笑顔で言い放つ。
啓「とういわけなんで俺も仲間に入れてください♡」
戸惑う匡と晃大。
晃大「え、何。どういうこと?」
匡「黒川くん、僕たちの仲間って……?」
啓「そのままの意味。俺もゲーム仲間にしてほしいなって」
匡と晃大、「説明しろ」とばかりに七生を見る。七生は辿々しく説明する。
七生「え、えーと……昨日、赤城が寮に怒鳴り込んできたじゃん? 女子と関わってそういうイザコザに巻き込まれるのが嫌になったみたい……です……」
晃大「あー……なるほど、そういうこと……」
晃大、匡、七生、教室内を見回す。いつも啓と絡んでいる女子たちが、今日は啓のことを遠巻きに見守っている。確かにゲーオタ集団の仲間入りをすれば女子は遠ざけられるよね、という。
晃大と匡は納得半分、困惑半分という表情。
七生(やっぱりそうなるよね……俺も啓からこの話を聞いたときは驚いたわ。まぁ俺は啓とゲームができたら嬉しいけど……)
七生は何も言わずに晃大と匡の返事を待つ。
晃大(言いにくそうに)「黒川の事情はわかったけど……女子を遠ざけたいなら他の方法を考えた方がいいんじゃないか? 俺たちと一緒にいると根暗なゲーオタ野郎だと思われるぞ……」
匡「うんうん。例えば彼女を作るとかさ、そういう方法でも昨日みたいなトラブルは避けられると思うけど……」
啓「彼女なぁ……今はななみんで満足してるからそういうのはいらないというか」
匡・晃大「「え?」」
匡と晃大が怪訝な表情を浮かべたので、七生は慌てて啓の口を手のひらで塞ぐ。
七生(わざとらしい大声で)「ほら、俺たち仲良しルームメイトだからさ! 2人で出かけることもあるし、飯もよく一緒に食ってるし!」
それから啓の耳元でささやく。
七生「一緒に寝てるってこと、2人に言うなよ! 普通に恥ずかしいから!」
啓「あはは、りょー」
匡と晃大は不思議そうに顔を見合わせている。
晃大(切り替えて)「黒川が納得してるならいいんだけどさ……ダウンロードはしてあんの?」
啓「昨日、ななみんに教えてもらってチュートリアルまでは終わってる」
匡「じゃあ黒川くんのレベルに合わせて最初の方のステージ行く? 僕、取りたいアイテムがあるんだ」
啓、近くの机から椅子を引っ張ってきて座る。スマホでゲーム画面を起動。4人で額を突き合わせてゲームを始める。
晃大「黒川のキャラは?」
七生「エルフ。バランス良くて育てやすいって聞いたから」
晃大「いーじゃん」
七生「ちょうど回復要員欲しかったしね。誰かさんが頻繁に回復アイテム買い忘れるからさ」
晃大「おい、余計なこと言うなよ」
七生「事実だろ」
わちゃわちゃ。
◯クリスマスの放課後・教室
セミロングの可愛い女子生徒①が、緊張しながら啓に話しかける。
女子生徒①「啓くん、今日これから用事あるかな? みんなでカラオケ行こうって話してるんだけど、一緒にどう?」
女子生徒の後ろでは、何人かの女子生徒が2人の会話を見守っている。啓とクリスマスカラオケ行きたいよ、という思いがひしひしと伝わってくる。
啓は女子生徒たちに視線を送り、笑顔でさらっと返事をする。
啓「ごめん、今日は予定があるんだ」
女子生徒①「さ、30分だけでも良いんだけどっ……」
啓「すごく大事な、急ぎの用事なんだよね。じゃ、そういうことだからまた明日!」
食い下がろうとする女子生徒①を置き去りにして、啓はさっさと教室から出て行ってしまう。
残された女子生徒①、近くにいた女子生徒②(お団子、姉御系)に抱きついて悲しそうな顔。
女子生徒①「うぇぇーん……啓が構ってくれなくなっちゃった……」
女子生徒②「最近、休み時間もゲームばっかりしてるもんね。しかも望月たちと……。何でそこ行っちゃったんだろ」
女子生徒①「啓が構ってくれないとイケメン成分が足りないー……」
女子生徒③(ギャル寄り)が小さな声で口を挟む。
女子生徒③「聞いた話なんだけどさ。赤城が『瑠流花に振られたのはお前のせいだー!』って啓に八つ当たりしたらしいよ。寮に怒鳴り込んで行ったんだって」
女子生徒①「えー、でもそれ、啓は関係なくない? 瑠流花、前から『赤城の束縛が強くてしんどい』って愚痴ってたよね」
女子生徒③「そうそう、赤城の自業自得なんだわ。でもそういうトラブルがあったから、啓はあたしたちに構ってくれなくなっちゃったんだと思うんだよね」
女子生徒②「えー……じゃあ赤城のせいじゃん……ウザっ」
女子生徒たちの会話を、教室の隅にいる赤城が聞いている。机の上には文房具とノート、アイドルの下敷きがのっている。頬杖をつきながら悔しそうに歯軋り。
◯寮へ向かう道
1人で道を歩く啓。はらはらと雪が降っている。啓はマフラーと手袋をつけておらず、相変わらず夏靴のまま。
そこに後ろから七生が駆け寄ってくる。
七生「啓!」
七生、息を弾ませて啓の横に並ぶ。
啓「ななみん、そんなに急いでどうしたの」
七生「いや、教室での会話を聞いてて……今日、どっか出かけんの?」
啓(さらっと)「いや、出かけないよ」
七生「あれ? でもさっき急ぎの用事があるって言ってなかった?」
啓「あんなの嘘だよ。カラオケに行きたくないからそれらしい理由で断っただけ」
啓は悪びれた様子もなく言い放つ。啓に予定がないとわかり、七生は胸を撫で下ろす。
七生「良かった。じゃあ今夜、晩飯を食ったら晃大の部屋に集合な。クリスマスパーティーするから」
啓「……いきなりだな」
七生(唇を尖らせて)「いきなりなんだよ。俺もさっき誘われたんだから」
2人並んで雪道を歩く。友達同士というには近く、でもそれ以上にはなれない距離感。
七生「で、プレゼント交換をするから500円以内で何か買ってこいってさ」
啓「え、今からじゃコンビニくらいしか行けねぇよ」
七生「コンビニでいーだろ。このまま寄ってく?」
啓「ん、寄ってく」
雪道には2人分の足跡が残っている。
◯夜・晃大の部屋
ゲームと漫画、アニメグッズで溢れた晃大の部屋。さまざまなアニメや漫画のグッズがあるが、とある日常アニメのヒロインのグッズ(フィギュアやポスターなど)が多い。こたつの上にはコンビニのクリスマスケーキと紙コップ、ペットボトルの炭酸飲料がのっている。
七生と啓がドアを開けると、安っぽいサンタ帽子を被った晃大と、いつも通りの姿の匡が出迎えてくれた。
晃大「メリークリスマース!」
匡「七生、啓くん、お疲れー」
七生、コンビニ袋からポテチを出してこたつに並べる。ケーキにのったサンタと目が合う。
七生「うわ、ケーキがある。意外と本格的だ」
晃大「バイト先のコンビニで買ってきたんだよ。みんなの好みがわからなかったから、とりあえず一番シンプルなやつ」
啓、こたつにクッキーを置いて尋ねる。
啓「晃大、バイトしてるんだ?」
晃大「ちょっとだけな。週6時間くらい」
啓「それでいくらくらい貰えるの?」
晃大「2万くらいは入るよ。オタクにはありがたい軍資金」
啓「ふーん……」
4人揃ってこたつの四方に腰を下ろす。匡がペーパーナイフでケーキを切り分け、晃大が紙コップに炭酸飲料を注いでいく。七生と啓は他のお菓子を開けたり、プラスチックのフォークを並べたり。4人でいることにすっかり慣れた雰囲気。
晃大(紙コップを手渡しながら)「啓、バイトすんの?」
啓「したいなぁ、と思ってる。もう少し生活に慣れてからになると思うけど」
晃大「接客?」
啓(悩みながら)「接客……が良いかなぁ。人と話すのは好きだし」
匡がのほほんと口を挟む。
匡「啓くんは、働く場所を選ばないとファンがついて大変なことになりそう」
七生(わかる……)
晃大「すすきののバーとかでバイトしたらすげぇ稼げるんだろうけど、未成年だしなぁ」
晃大、思い出したように七生に話題を向ける。
晃大「七生の実家でバイトの募集はしてねぇの? GWとか夏休みとか、長期でバイトしたら結構稼げるんじゃねえ?」
啓、目を丸くして七生を見る。
啓「えっ……ななみんの実家って会社か何かやってるの?」
七生(大慌てで)「違う違う! うちはただの農家! 忙しいときに農業バイトを雇うことがあるとかそういう話!」
啓「あ、なるほど。北海道らしい」
会話が一区切りしたので、紙コップで乾杯をしてケーキをつつき始める。ホールケーキを4等分なので1人分がかなりの大きさ。半分くらいを黙々と食べ進め、唐突に啓は言う。
啓「バイトの話は置いといて、ななみんち行ってみたいなぁ」
七生「ぅ、え?」
七生、驚いてフォークを落としそうになる。
七生(都会育ちの啓をうちに!? 無理無理無理、恥ずかしくて死ぬ……!)
七生「や、止めた方がいーよ! 田んぼと畑ばっかで遊ぶとこなんてないし、駅からのアクセスも悪いし……」
啓(残念そうに)「そっかぁ」
◯時間経過
こたつの上にはトランプが散らばっている。ケーキと大半のお菓子は食べ終わり、ペットボトルの中身も残りわずか。
晃大がサンタ帽子を被り直して宣言する。
晃大「よし、そろそろプレゼント交換しよーぜ!」
コンビニのレシートを小さく千切り、裏に「まさ」「こーだい」「けい」「ななみ」と書く。雑なくじ引きが完成。それぞれがくじ引きを引き、少し緊張した表情で開く。
匡「……あ! 僕、啓くんのだ」
啓「ほんと? 俺は匡の」
七生「……ってことは俺と晃大がばくりっこか」
啓と匡、晃大と七生がそれぞれプレゼント交換をすることに。プレゼントを受け取り、「さんきゅ」「どーも」とお礼を言って開封。
七生(『ゾンビランド1巻』というタイトルの漫画を手に)「この漫画、面白いの?」
晃大「知らね。今日発売の漫画コーナーから適当に選んできた」
七生「斬新なプレゼント」
晃大(コンビニ袋に入った駄菓子を見ながら)「七生のは駄菓子詰め合わせか。今、みんなで食う?」
ばらばらとこたつに駄菓子を置く晃大。その隣では啓と匡がプレゼントにコメント中。
啓(箱に入ったポケットカイロを眺め)「うわ、これ欲しかったやつ! 匡、ありがとう〜♡」
匡(シマエナガのぬいぐるみをもふもふしながら)「啓くんのプレゼントも可愛い!」
きゃいきゃい楽しそうな匡と啓を眺め、晃大がぽつりと言う。
晃大「あっちの2人はプレゼントのセンス、あるよなぁ……俺たちとは大違い」
七生「そうだね……」
七生、自分が買った駄菓子のチョコレートをつまんで口に入れる。興味ないふりをしながらも、匡の持っているシマエナガのぬいぐるみが気になって仕方ない。
七生(啓からのプレゼント、いいなぁ。俺も欲しかった……)
◯時間経過・七生と啓の部屋
クリスマスパーティーが終わり、七生と啓は自分たちほ部屋に帰ってきた。自分のベッドにダイブし、啓は満足そうな笑顔。
啓「うぁー、楽しかった! カラオケなんて行かなくて良かったー……」
七生(素っ気なく)「楽しかったね」
啓、布団を抱きしめながら不思議そうに七生を見る。
啓「ななみん、機嫌悪い?」
七生(慌てて)「いや、悪くないよ。ちょっと疲れただけで……」
七生(啓のプレゼントが当たらなくてへこんでる、なんてカッコ悪くて言えるか!)
ふーん、とつぶやく啓。ベッドから身を乗り出して、床に置かれた通学鞄を漁る。次の瞬間、七生の胸元に小さな紙包みが飛んでくる。
七生「……ナニコレ?」
啓(にまっと悪戯げに)「ななみんにクリスマスプレゼント♡」
七生「え、嘘!? 俺、何も買ってない……」
啓「いーのいーの。俺が買いたいから買っただけし。全然、高い物でもないし」
七生、ドキドキしながら紙包みを開ける。中に入っていたのはシマエナガのイニシャルキーホルダー。ふくふく可愛いシマエナガが、「N」の文字を持っている。
七生「かわい……」
啓「かわいーだろ。シマエナガって北海道の鳥だったんだな。東京でもグッズを見かけることはあったけど、あんまり意識したことなくてさ」
啓の説明がいまいち頭に入ってこない七生。嬉しすぎてちょっと目が潤んでいる。
七生(これ、コンビニには売ってなかった……何日も前から準備してくれてたってこと? どうしよう、嬉しすぎて死にそ……)
啓「ななみん、大丈夫?」
目の前で啓の声がしたので驚く。いつの間にかそばにやってきた啓が、七生の顔を覗き込んでいる。嬉しすぎて泣きそうになってことがバレたら恥ずかしいので、慌てて他の話題を探す。
七生「あ、あのさ! 啓は冬休み、どっか行くの?」
啓「ん、行かないよ。旅行に行くような金もないし、帰る家もないしさー」
七生「あ……(啓の境遇を思い出す)じゃあ帰省はしないのか……」
啓「しないしない。寮にこもってゲームでもしてるわ。気が向いたら初詣くらい行くかもしれないけど」
啓は何でもないというようにへらっと笑う。でも七生には、その笑顔がどこか寂しそうに見えてしまう。
啓から貰ったキーホルダーを見つめる。ちょっとだけ勇気を出してみようか、という気持ちになってくる。
七生「あのさっ……もし啓が良ければなんだけど、年末年始うちに来る……!?」
啓、目を丸くする。
啓「え……ななみんの実家ってこと?」
七生「そう! アクセス悪いし遊ぶとこもないし、つまんない町なんだけどさっ……(言い訳っぽく)ほら、年末年始は寮の食堂も閉まっちゃうから、ご飯の準備とか大変じゃん? うちに来てもらえばその辺の心配はなくなるというか……」
早口でそれっぽい説明を終えた七生は、そろそろと啓の表情をうかがう。
七生「ど、どうかな……?」
啓は驚いた表情から笑顔に変わる。ガバっと七生に抱きついてくる。
七生「ぎゃーっ!」
啓「ななみんと年越しとかマジで嬉しっ……朝までゲームしような♡ (はっと気づいて)あ、田舎って言ってたけどひょっとしてネット回線が通ってなかったり……」
七生「ネットくらい使えるわ馬鹿!」
抱きつかれた拍子に七生の手を離れたシマエナガのキーホルダーが、仲良しな2人を見つめている。
次話、仲良し帰省編!
啓が転校してきてから3週間が経とうとしていた。季節は12月中頃。雪がちらつき初め、最高気温が0度を下回る日も出てきた。辺りが雪景色に包まれる日も近い。
啓と七生はベッドの上に並んで座っている。壁に背中をつけて、足には毛布をかけて、暖を取りながらそれぞれの趣味に楽しんでいる。七生はゲーム、啓はスマホで音楽鑑賞。やっていることは違うが仲良さげ。
啓、片耳のイヤホンを取って七生に話しかける。
啓「そのゲーム、そんなに楽しい?」
七生「楽しい」
啓(ゲーム画面を覗き込んで)「今、何してんの?」
七生「素材集め。倒したモンスターの皮とか牙で、新しい武器や防具を作れるんだよ」
啓「ふーん……」
啓が興味津々でゲーム画面を見つめるので、七生は試しに提案してみる。
七生「……やる?」
啓「え?」
七生「興味あるなら貸すけど。ちょっとやってみて、面白かったら自分のスマホにダウンロードすれば?」
啓「んー……でも俺、ゲームってまともにやったことないんだよなぁ」
七生「まじ?」
啓「まじまじ。ゲーセンでたまに太鼓の名人やってたくらい」
七生「今どきそんな奴いるんだ……」
啓「意外といるんですよ、ここに」
そのとき、廊下から大声が聞こえてくる。何を言っているのかはわからないが怒っているような声。
啓「……何だろう?」
七生「さぁ……」
◯寮の廊下
大声に誘われて廊下に出てきた啓と七生。廊下には2人の他にも、大勢の寮生が集まっている。みんな、誰が何を叫んでいるのか気になって部屋から出てきた模様。匡と晃大の姿もある。
廊下の中心で叫んでいるのは、七生と同じクラスの赤城(ヤンキーっぽい男子)だった。いかつい見た目だが、学生鞄にはとある女性アイドルの缶バッチがついている。
七生(赤城くん……? 赤城くんの部屋は別の棟のはずだけど、どうしてここにいるんだ?)
赤城「黒川! どこにいるんだ、出てこいコラァ!」
唐突に名前を呼ばれ、啓は「え、俺?」と不思議そうな顔。周囲の視線が啓に集まり、赤城が啓の存在に気付く。
赤城「おいこら黒川ぁ! てめぇ何様のつもりだ! 人様のカノジョ誑かしやがって!」
啓「……カノジョ? 誰のこと?」
啓は本当にわからないという様子。赤城は啓の胸ぐらを掴む。
赤城「瑠流花だよ! てめぇが瑠流花を誑かしたせいで、俺が振られる羽目になったんじゃねぇか! ぶっ殺すぞ!」
七生(瑠流花……ってあの派手な人か。へー、赤城くんと付き合ってたんだ……)
七生は、瑠流花(派手目のギャル)の姿を思い浮かべる。他の何人かの女子生徒と一緒に、よく啓の周りに集まっていた。
胸ぐらを掴まれているにも関わらず、啓は飄々とした調子で返事をする。
啓「誑かした、っていうほど関わった記憶もねぇけど。クラスメイトとしてのおしゃべりの範囲内で心移りするんなら、お前の魅力が足りなかったんだろ」
赤城(顔を真っ赤にしてブルブル震えて)「何だとぉっ……!」
赤城はこぶしを振り上げるが、走ってきた数人の上級生に制止される。啓の入寮当初、七生に案内を命じ監督生①②の姿もある。
数人がかりで取り押さえられた赤城は大暴れ。
赤城「離せ! あいつを殴らせろ!」
上級生「まぁまぁ落ち着けって」
上級生「あんまり派手なことすると退学になるぞー」
赤城、そのまま外へと連行されていく。
廊下に集まった人々が解散していく中、監督生②が啓に忠告する。
監督生②「こういうことは起こらないようにしてくれないかな。寮の備品が壊れたりすると、みんなに迷惑がかかるから」
啓「……はーい、気をつけますー」
啓は「何で俺が注意されるんだよ」と不満げ。赤城が連行された方へと向かっていく監督生②の背中を眺めながら、七生は他人事のように考える。
七生(イケメンってのも大変なんだな……俺なんて、ちょっと会話したくらいで惚れられるなんて有り得ねぇわ……)
啓(ぽつりと独り言)「うーん……もう面倒だな、こういうの……」
◯翌日・教室
いつものように机でゲームをする七生、匡、晃大のところに啓がやってくる。邪気のない笑顔で言い放つ。
啓「とういわけなんで俺も仲間に入れてください♡」
戸惑う匡と晃大。
晃大「え、何。どういうこと?」
匡「黒川くん、僕たちの仲間って……?」
啓「そのままの意味。俺もゲーム仲間にしてほしいなって」
匡と晃大、「説明しろ」とばかりに七生を見る。七生は辿々しく説明する。
七生「え、えーと……昨日、赤城が寮に怒鳴り込んできたじゃん? 女子と関わってそういうイザコザに巻き込まれるのが嫌になったみたい……です……」
晃大「あー……なるほど、そういうこと……」
晃大、匡、七生、教室内を見回す。いつも啓と絡んでいる女子たちが、今日は啓のことを遠巻きに見守っている。確かにゲーオタ集団の仲間入りをすれば女子は遠ざけられるよね、という。
晃大と匡は納得半分、困惑半分という表情。
七生(やっぱりそうなるよね……俺も啓からこの話を聞いたときは驚いたわ。まぁ俺は啓とゲームができたら嬉しいけど……)
七生は何も言わずに晃大と匡の返事を待つ。
晃大(言いにくそうに)「黒川の事情はわかったけど……女子を遠ざけたいなら他の方法を考えた方がいいんじゃないか? 俺たちと一緒にいると根暗なゲーオタ野郎だと思われるぞ……」
匡「うんうん。例えば彼女を作るとかさ、そういう方法でも昨日みたいなトラブルは避けられると思うけど……」
啓「彼女なぁ……今はななみんで満足してるからそういうのはいらないというか」
匡・晃大「「え?」」
匡と晃大が怪訝な表情を浮かべたので、七生は慌てて啓の口を手のひらで塞ぐ。
七生(わざとらしい大声で)「ほら、俺たち仲良しルームメイトだからさ! 2人で出かけることもあるし、飯もよく一緒に食ってるし!」
それから啓の耳元でささやく。
七生「一緒に寝てるってこと、2人に言うなよ! 普通に恥ずかしいから!」
啓「あはは、りょー」
匡と晃大は不思議そうに顔を見合わせている。
晃大(切り替えて)「黒川が納得してるならいいんだけどさ……ダウンロードはしてあんの?」
啓「昨日、ななみんに教えてもらってチュートリアルまでは終わってる」
匡「じゃあ黒川くんのレベルに合わせて最初の方のステージ行く? 僕、取りたいアイテムがあるんだ」
啓、近くの机から椅子を引っ張ってきて座る。スマホでゲーム画面を起動。4人で額を突き合わせてゲームを始める。
晃大「黒川のキャラは?」
七生「エルフ。バランス良くて育てやすいって聞いたから」
晃大「いーじゃん」
七生「ちょうど回復要員欲しかったしね。誰かさんが頻繁に回復アイテム買い忘れるからさ」
晃大「おい、余計なこと言うなよ」
七生「事実だろ」
わちゃわちゃ。
◯クリスマスの放課後・教室
セミロングの可愛い女子生徒①が、緊張しながら啓に話しかける。
女子生徒①「啓くん、今日これから用事あるかな? みんなでカラオケ行こうって話してるんだけど、一緒にどう?」
女子生徒の後ろでは、何人かの女子生徒が2人の会話を見守っている。啓とクリスマスカラオケ行きたいよ、という思いがひしひしと伝わってくる。
啓は女子生徒たちに視線を送り、笑顔でさらっと返事をする。
啓「ごめん、今日は予定があるんだ」
女子生徒①「さ、30分だけでも良いんだけどっ……」
啓「すごく大事な、急ぎの用事なんだよね。じゃ、そういうことだからまた明日!」
食い下がろうとする女子生徒①を置き去りにして、啓はさっさと教室から出て行ってしまう。
残された女子生徒①、近くにいた女子生徒②(お団子、姉御系)に抱きついて悲しそうな顔。
女子生徒①「うぇぇーん……啓が構ってくれなくなっちゃった……」
女子生徒②「最近、休み時間もゲームばっかりしてるもんね。しかも望月たちと……。何でそこ行っちゃったんだろ」
女子生徒①「啓が構ってくれないとイケメン成分が足りないー……」
女子生徒③(ギャル寄り)が小さな声で口を挟む。
女子生徒③「聞いた話なんだけどさ。赤城が『瑠流花に振られたのはお前のせいだー!』って啓に八つ当たりしたらしいよ。寮に怒鳴り込んで行ったんだって」
女子生徒①「えー、でもそれ、啓は関係なくない? 瑠流花、前から『赤城の束縛が強くてしんどい』って愚痴ってたよね」
女子生徒③「そうそう、赤城の自業自得なんだわ。でもそういうトラブルがあったから、啓はあたしたちに構ってくれなくなっちゃったんだと思うんだよね」
女子生徒②「えー……じゃあ赤城のせいじゃん……ウザっ」
女子生徒たちの会話を、教室の隅にいる赤城が聞いている。机の上には文房具とノート、アイドルの下敷きがのっている。頬杖をつきながら悔しそうに歯軋り。
◯寮へ向かう道
1人で道を歩く啓。はらはらと雪が降っている。啓はマフラーと手袋をつけておらず、相変わらず夏靴のまま。
そこに後ろから七生が駆け寄ってくる。
七生「啓!」
七生、息を弾ませて啓の横に並ぶ。
啓「ななみん、そんなに急いでどうしたの」
七生「いや、教室での会話を聞いてて……今日、どっか出かけんの?」
啓(さらっと)「いや、出かけないよ」
七生「あれ? でもさっき急ぎの用事があるって言ってなかった?」
啓「あんなの嘘だよ。カラオケに行きたくないからそれらしい理由で断っただけ」
啓は悪びれた様子もなく言い放つ。啓に予定がないとわかり、七生は胸を撫で下ろす。
七生「良かった。じゃあ今夜、晩飯を食ったら晃大の部屋に集合な。クリスマスパーティーするから」
啓「……いきなりだな」
七生(唇を尖らせて)「いきなりなんだよ。俺もさっき誘われたんだから」
2人並んで雪道を歩く。友達同士というには近く、でもそれ以上にはなれない距離感。
七生「で、プレゼント交換をするから500円以内で何か買ってこいってさ」
啓「え、今からじゃコンビニくらいしか行けねぇよ」
七生「コンビニでいーだろ。このまま寄ってく?」
啓「ん、寄ってく」
雪道には2人分の足跡が残っている。
◯夜・晃大の部屋
ゲームと漫画、アニメグッズで溢れた晃大の部屋。さまざまなアニメや漫画のグッズがあるが、とある日常アニメのヒロインのグッズ(フィギュアやポスターなど)が多い。こたつの上にはコンビニのクリスマスケーキと紙コップ、ペットボトルの炭酸飲料がのっている。
七生と啓がドアを開けると、安っぽいサンタ帽子を被った晃大と、いつも通りの姿の匡が出迎えてくれた。
晃大「メリークリスマース!」
匡「七生、啓くん、お疲れー」
七生、コンビニ袋からポテチを出してこたつに並べる。ケーキにのったサンタと目が合う。
七生「うわ、ケーキがある。意外と本格的だ」
晃大「バイト先のコンビニで買ってきたんだよ。みんなの好みがわからなかったから、とりあえず一番シンプルなやつ」
啓、こたつにクッキーを置いて尋ねる。
啓「晃大、バイトしてるんだ?」
晃大「ちょっとだけな。週6時間くらい」
啓「それでいくらくらい貰えるの?」
晃大「2万くらいは入るよ。オタクにはありがたい軍資金」
啓「ふーん……」
4人揃ってこたつの四方に腰を下ろす。匡がペーパーナイフでケーキを切り分け、晃大が紙コップに炭酸飲料を注いでいく。七生と啓は他のお菓子を開けたり、プラスチックのフォークを並べたり。4人でいることにすっかり慣れた雰囲気。
晃大(紙コップを手渡しながら)「啓、バイトすんの?」
啓「したいなぁ、と思ってる。もう少し生活に慣れてからになると思うけど」
晃大「接客?」
啓(悩みながら)「接客……が良いかなぁ。人と話すのは好きだし」
匡がのほほんと口を挟む。
匡「啓くんは、働く場所を選ばないとファンがついて大変なことになりそう」
七生(わかる……)
晃大「すすきののバーとかでバイトしたらすげぇ稼げるんだろうけど、未成年だしなぁ」
晃大、思い出したように七生に話題を向ける。
晃大「七生の実家でバイトの募集はしてねぇの? GWとか夏休みとか、長期でバイトしたら結構稼げるんじゃねえ?」
啓、目を丸くして七生を見る。
啓「えっ……ななみんの実家って会社か何かやってるの?」
七生(大慌てで)「違う違う! うちはただの農家! 忙しいときに農業バイトを雇うことがあるとかそういう話!」
啓「あ、なるほど。北海道らしい」
会話が一区切りしたので、紙コップで乾杯をしてケーキをつつき始める。ホールケーキを4等分なので1人分がかなりの大きさ。半分くらいを黙々と食べ進め、唐突に啓は言う。
啓「バイトの話は置いといて、ななみんち行ってみたいなぁ」
七生「ぅ、え?」
七生、驚いてフォークを落としそうになる。
七生(都会育ちの啓をうちに!? 無理無理無理、恥ずかしくて死ぬ……!)
七生「や、止めた方がいーよ! 田んぼと畑ばっかで遊ぶとこなんてないし、駅からのアクセスも悪いし……」
啓(残念そうに)「そっかぁ」
◯時間経過
こたつの上にはトランプが散らばっている。ケーキと大半のお菓子は食べ終わり、ペットボトルの中身も残りわずか。
晃大がサンタ帽子を被り直して宣言する。
晃大「よし、そろそろプレゼント交換しよーぜ!」
コンビニのレシートを小さく千切り、裏に「まさ」「こーだい」「けい」「ななみ」と書く。雑なくじ引きが完成。それぞれがくじ引きを引き、少し緊張した表情で開く。
匡「……あ! 僕、啓くんのだ」
啓「ほんと? 俺は匡の」
七生「……ってことは俺と晃大がばくりっこか」
啓と匡、晃大と七生がそれぞれプレゼント交換をすることに。プレゼントを受け取り、「さんきゅ」「どーも」とお礼を言って開封。
七生(『ゾンビランド1巻』というタイトルの漫画を手に)「この漫画、面白いの?」
晃大「知らね。今日発売の漫画コーナーから適当に選んできた」
七生「斬新なプレゼント」
晃大(コンビニ袋に入った駄菓子を見ながら)「七生のは駄菓子詰め合わせか。今、みんなで食う?」
ばらばらとこたつに駄菓子を置く晃大。その隣では啓と匡がプレゼントにコメント中。
啓(箱に入ったポケットカイロを眺め)「うわ、これ欲しかったやつ! 匡、ありがとう〜♡」
匡(シマエナガのぬいぐるみをもふもふしながら)「啓くんのプレゼントも可愛い!」
きゃいきゃい楽しそうな匡と啓を眺め、晃大がぽつりと言う。
晃大「あっちの2人はプレゼントのセンス、あるよなぁ……俺たちとは大違い」
七生「そうだね……」
七生、自分が買った駄菓子のチョコレートをつまんで口に入れる。興味ないふりをしながらも、匡の持っているシマエナガのぬいぐるみが気になって仕方ない。
七生(啓からのプレゼント、いいなぁ。俺も欲しかった……)
◯時間経過・七生と啓の部屋
クリスマスパーティーが終わり、七生と啓は自分たちほ部屋に帰ってきた。自分のベッドにダイブし、啓は満足そうな笑顔。
啓「うぁー、楽しかった! カラオケなんて行かなくて良かったー……」
七生(素っ気なく)「楽しかったね」
啓、布団を抱きしめながら不思議そうに七生を見る。
啓「ななみん、機嫌悪い?」
七生(慌てて)「いや、悪くないよ。ちょっと疲れただけで……」
七生(啓のプレゼントが当たらなくてへこんでる、なんてカッコ悪くて言えるか!)
ふーん、とつぶやく啓。ベッドから身を乗り出して、床に置かれた通学鞄を漁る。次の瞬間、七生の胸元に小さな紙包みが飛んでくる。
七生「……ナニコレ?」
啓(にまっと悪戯げに)「ななみんにクリスマスプレゼント♡」
七生「え、嘘!? 俺、何も買ってない……」
啓「いーのいーの。俺が買いたいから買っただけし。全然、高い物でもないし」
七生、ドキドキしながら紙包みを開ける。中に入っていたのはシマエナガのイニシャルキーホルダー。ふくふく可愛いシマエナガが、「N」の文字を持っている。
七生「かわい……」
啓「かわいーだろ。シマエナガって北海道の鳥だったんだな。東京でもグッズを見かけることはあったけど、あんまり意識したことなくてさ」
啓の説明がいまいち頭に入ってこない七生。嬉しすぎてちょっと目が潤んでいる。
七生(これ、コンビニには売ってなかった……何日も前から準備してくれてたってこと? どうしよう、嬉しすぎて死にそ……)
啓「ななみん、大丈夫?」
目の前で啓の声がしたので驚く。いつの間にかそばにやってきた啓が、七生の顔を覗き込んでいる。嬉しすぎて泣きそうになってことがバレたら恥ずかしいので、慌てて他の話題を探す。
七生「あ、あのさ! 啓は冬休み、どっか行くの?」
啓「ん、行かないよ。旅行に行くような金もないし、帰る家もないしさー」
七生「あ……(啓の境遇を思い出す)じゃあ帰省はしないのか……」
啓「しないしない。寮にこもってゲームでもしてるわ。気が向いたら初詣くらい行くかもしれないけど」
啓は何でもないというようにへらっと笑う。でも七生には、その笑顔がどこか寂しそうに見えてしまう。
啓から貰ったキーホルダーを見つめる。ちょっとだけ勇気を出してみようか、という気持ちになってくる。
七生「あのさっ……もし啓が良ければなんだけど、年末年始うちに来る……!?」
啓、目を丸くする。
啓「え……ななみんの実家ってこと?」
七生「そう! アクセス悪いし遊ぶとこもないし、つまんない町なんだけどさっ……(言い訳っぽく)ほら、年末年始は寮の食堂も閉まっちゃうから、ご飯の準備とか大変じゃん? うちに来てもらえばその辺の心配はなくなるというか……」
早口でそれっぽい説明を終えた七生は、そろそろと啓の表情をうかがう。
七生「ど、どうかな……?」
啓は驚いた表情から笑顔に変わる。ガバっと七生に抱きついてくる。
七生「ぎゃーっ!」
啓「ななみんと年越しとかマジで嬉しっ……朝までゲームしような♡ (はっと気づいて)あ、田舎って言ってたけどひょっとしてネット回線が通ってなかったり……」
七生「ネットくらい使えるわ馬鹿!」
抱きつかれた拍子に七生の手を離れたシマエナガのキーホルダーが、仲良しな2人を見つめている。
次話、仲良し帰省編!



