生徒会役員選挙で見事、当選をした僕だったが、早速今日、生徒会室に呼び出され、正式に副会長の任命を受けた。というより、受けてしまった。
名ばかりでそこまで仕事がなさそうな副会長の仕事かと思いきや――

「じゃあ、一ノ瀬くん、この資料の整理お願い。あと、この行事予定、表にまとめて全学年に配布よろしく。」

会長が涼しい顔で次々と指示を飛ばしてくる。
いやいやいや。これ副会長っていうか、ただの雑用係じゃないのか?

「え、ちょ、待っ――」

「副会長なんだから当然でしょ?頼りにしてるからね〜」

にっこり笑って渡された分厚いファイル。
机の上に置かれた瞬間、ずしりと鈍い音を立てた。

……これ、俺の学生生活終わったな。

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結局、放課後まで授業の時間以外みっちり働かされ、ようやく解放された。
昇降口で雨音が待っていてくれていたのを見て、思わず肩の力が抜ける。

「おつかれさま、湊くん。なんか疲れた顔してるよ?」

「……会長にこき使われた。」

「ははっ、想像つく。会長は人使い荒いことで有名だし。おまけに湊くんは色々やらかしてそうだし」

二人で相合傘をしながら歩き出す。
昼間の忙しさが嘘みたいに、雨のしとしとした音が心地よかった。

「でも、湊くんが副会長でよかった。安心できるし。」

「……俺は全然安心できないけどな。」

そんな他愛もない会話をしていると――
背後に、妙な気配を感じた。

振り返ると、建物の影に慌てて隠れる人影が二つ。

「……おい。今、誰かいなかったか?」

「え?気のせいじゃない?」

いや、あれは気のせいじゃない。
見間違えるはずがない。

校門の柱の裏から、俊介と奈々子がひょっこり顔を出していた。
こそこそしながら手を振ってくる。

「……尾行かよ。」

「ふふっ。面白いね、あの二人。」

雨音は笑いながらも、傘をぎゅっと俺のほうへ寄せた。
俺はため息をつきつつ、どこかくすぐったい気持ちのまま歩き続けた。

――副会長の仕事は大変だけど。
雨音と歩ける時間があれば、案外やっていけるのかもしれないな。

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おまけ。

「あの2人楽しそうに話してるね。」

「湊の初恋なんだから応援しないとな。」

「へ〜。そうなんだ〜。いいこと聞いちゃった。」

「そういえば、雨音は湊のことをどう思っているの?」

「えー、教えないよ…」

「あ、尾行がバレた!もういいや、手を振って応援してやろう。」

「応援の仕方面白いね。フフッ」

俺たちも俺たちで楽しい下校ライフを送っていたのであった。