今日は久しぶりに雨になった。
どんよりした感じが漂う中、俺はどんな感情でいれば良いのかよくわからなかった。
なにせ、今日の放課後に、選挙管理委員会から当選者が発表されるからだ。

「おーい、一ノ瀬湊様、大丈夫ですかー?」

俊介がいじるように行ってくる。
周りを見ると、もう午前中の授業は終わり、あとは昼飯を食って放課後になるという時間だった。

「ありがと、俺意識飛んでたわ。」

「やはり意識飛んでたか。お前みたいな奴が人前に連続してたった上、今日当選発表だしな。あんまふかくかんがえすぎるなよ。」

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そうして迎えた放課後、学校の掲示板前には自然と生徒たちが集まっていた。
空気はざわざわと、期待と緊張が入り混じる。

俺も俊介と奈々子と、そして雨音と一緒に、少し離れた位置から眺めていた。

「……やっぱり怖いな」

「大丈夫、湊。緊張しても顔には出てないよ」

雨音のその言葉で、少しだけ気持ちが落ち着く。

掲示板の前で選挙管理委員会の委員長が一言。

「生徒会役員の投票結果を発表します」

ざわめきが一段と大きくなる。
隣の生徒が持っていた発表の紙が広げられた。
紙に書かれた名前を指さす委員長の声が体育館まで響くような気がした。

「一ノ瀬湊!平田相馬!中川渚!以上、3名。」

俺の名前が呼ばれた瞬間、思わず雨音の方を見た。
彼女は満面の笑みで、小さくガッツポーズをしていた。

「やった……!」

思わず胸の中の力が一気に抜けて、足元がふわっと軽くなる。

「おめでとう、湊!」

雨音が手を握って喜んでくれる。

「ありがとう……雨音」

俊介と奈々子も駆け寄ってきて、肩を叩いてくれる。

「お前、やったな!」

「正直、顔真っ青だったけどな」

俺は笑いながらも、まだ信じられない気持ちだった。
でも、隣で笑ってくれる雨音の存在が、現実だと教えてくれる。

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帰り道、二人で雨の中を歩く。

「本当にありがとう、俺なんかを推薦してくれて」

「ふふ、当たり前じゃん。だって湊くんのこと、ちゃんとみんなに伝えたかったし」

夕焼けに染まる道、二人の影が長く伸びる。

「……そうだ、俺、これからも頼む」

「え、何を?」

思わず照れながらも、自然に口に出す。

「一緒に歩くの、これからも」

雨音はにやりと笑って、ちょっと小突いた。

「いいよ。私も、湊と一緒なら楽しいしね」

心の奥の胸の鼓動が、いつもより速くなる。
――梅雨の雨も、もう怖くない。
俺の横には、ずっと雨音がいるから。