結果から言うと、親衛隊が特別指導、俊介が厳重注意となった。

親衛隊は強制的に解散され、今日の生徒議会後に親衛隊が辞めた分の人数の生徒会役員の選出が始まる。幹部の連中はしばらくの間、特別指導室に通い、反省文を書いたりただただ先生に指導をされるだけの放課後を送るだろう。

俊介はカメラを無断で乗っ取って、無断で複製、使用したので厳重注意とのことだ。
いや、完全に正義の行動だったんだが、ルール違反はルール違反らしい。

(親友に色々やらせすぎたな。……あとで何か奢らないと。)

その余波で今日は、親衛隊が抜けた分の生徒会役員を補充するため、生徒議会が急きょ開催されることになった。
授業は二時間吹っ飛び、生徒会室に全学年の代表や委員が集まる。

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「では、これより生徒議会を始めます。」

議長の生徒会長が宣言すると、体育館内がざわめく。
やっぱり話題は「親衛隊の解散」と「役員選出」だ。

「……よりによってあいつらが生徒会の補佐役をやってたなんてな。」

俊介が小声で耳打ちしてくる。

「そりゃ力持つわけだ。雨音ちゃん絡みの“監視役”として名前だけ借りてたって感じか。」

俺は返事をしなかった。
でも確かに、表向きは「生徒会の補助係」なんて肩書きがあったから、親衛隊は堂々と廊下を仕切っていたのかもしれない。

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「補充人員については、立候補か推薦によって選びます。」

生徒会長の声に、何人かがざわっと視線を動かす。
その中で、隣に座っていた雨音が静かに手を挙げた。

「私、推薦したい人がいます。」

全員の視線が雨音に集まる。

「……一ノ瀬湊くんです。」

「はぁああ!?」

思わず俺はびっくりして声の裏返った叫び声をあげた。体育館のあちこちからも驚きのざわめきが広がる。

「まじかよ」
「あの地味男が?」
「いやでも最近…」

みんな勝手に囁き合う。
俺は必死で否定の手を振った。

「いやいやいや!無理ですって!俺、そういうの一番苦手なんで!」

しかし雨音はまっすぐ俺を見ていた。

「湊くんは、誰かを助けるためにちゃんと動ける人だから。今回だって……私がどれだけ救われたか。」

その声は強くて、少し震えていた。
彼女の瞳に押され、俺は言葉を失う。

(……どうしてこうなるんだよ。)

会議室の空気が重くなったところで、生徒会長が言った。

「推薦が出た以上、受けるかどうかは本人の意思に委ねます。一ノ瀬、どうだ?」

俺は喉を詰まらせながら、ただ考えていた。
逃げたい気持ちと、雨音の真剣な眼差し。

(……どう答えるのが正解なんだ?)

ここでどういう選択を取ればいいのか分からなかった俺は、一旦保留ということで、他にも立候補者などを募集してこの議会は終了した。