—1—
父さんが死んだ。
オレの憧れで、目標だった父さんが魔王に殺された。
全身の力が抜けて頭が真っ白になる。
「父さん、オレ、まだ父さんから教わりたいことが沢山あったのに……。みんなを、母さんを頼むって言われてもオレの力じゃ……」
受け入れ難い事実が思考を放棄させる。
「青葉! おい青葉!!」
「冬士……」
冬士に体を強く揺さぶられ、現実に引き戻された。
「俺があいつを止める。青葉はその間に師匠を連れて外に逃げろ」
親指を立てて冬士が後方を指す。
アドラメレクが放った魔槍・ブリューナクがボスフロアに大きな風穴を開けていた。
すでにダンジョンの自動修復が始まっているが、穴が塞がるまでまだ時間が掛かりそうだ。
オレは左腕を、桔梗さんは右腕を怪我しているが穴を抜けてゲートに辿り着くくらいの余力は残っている。
「止めるって……どう考えても無理だろ。冬士も見てただろ。S級の父さんと桔梗さんでも敵わなかったんだ。お前がどうこうできる相手じゃない」
「でもここで何もしなければ全員死ぬだけだ!! 例え無謀だとしても可能性がゼロじゃないならそれに賭けるしかない。ここでS級を2人も失えばそれこそ人類に勝ち目はない」
「2人とも伏せろ!」
桔梗さんの叫び声に反応してオレと冬士が同時に身を屈めた。
「掌炎の業火道」
刹那、頭上に火炎砲が駆け抜ける。
「作戦会議は終わりか? 待ちくたびれたぞ」
桔梗さんの左腕から放たれた火炎砲をアドラメレクは球体状の障壁を展開して防いだ。
桔梗さんは切断された右腕を炎で焼き、無理矢理止血したようだ。
傷口がかなり痛々しい。
「冬士、言ったはずだ。未来ある弟子をこんなところで死なせる訳にはいかないと。私が時間を稼ぐ。2人はその間にダンジョンの外に逃げるんだ」
障壁を解除したアドラメレクは空間の歪みから魔槍・ブリューナクを取り出し、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
トドメを刺そうと思えばいつでも刺せる。
こちらの戦力とアドラメレクにはそれだけの実力差がある。
それでもトドメを刺さず弄んでいるのは純粋に魔族の性格の悪さがそうさせているのだろう。
「師匠、最後までわがままな弟子ですみませんでした」
冬士が桔梗さんの命令を無視してアドラメレクに単身で突っ込んだ。
全身に炎を纏いながら詠唱する。
「我が命、燃え尽きるその刻まで篝火に捧ぐ。固有異能・篝火の砂時計ッ!」
フロアに複数の篝火が円を描くように等間隔で出現。
篝火同士を繋ぐように炎の壁が広がり、壁の内側に冬士とアドラメレクが閉じ込められた。
壁の外からだとその姿を薄らとしか確認することができない。
炎の壁で囲まれた中心、その上空には篝火の形を模した砂時計が浮かんでいる。
「炎の結界。鳥籠に閉じ込めて時間稼ぎをする算段だろうがこんなものブリューナクで突けば」
アドラメレクが魔槍で炎壁を突くがびくともしない。
「無駄だ。この技は俺が死なない限り解けることはない」
「自らの命を代償にするとは実に愚かだ」
「あいつにはそれだけの価値があるんだよ。青葉、早く行け! 30秒が限界だ!」
「くそっ! 冬士、ハンター協会から応援を呼んでくるからそれまで絶対に死ぬんじゃねーぞ!!」
「ああ、頼んだぜ。相棒」
普段冬士の口から出ない『相棒』という言葉が胸に響いた。
フロアに開いた穴を乗り越え、ふと振り返ると、宙に浮いていた砂時計が反転して火が灯った。
それが開戦の合図となり、轟音と共に衝撃波が伝わってくる。
冬士が文字通り命を燃やしながら戦っている。
「青葉、悪いが飛ばすぞ」
弟子の窮地とあってはなりふり構ってはいられない。
桔梗さんは炎を纏い、ゲートの方向に駆けて行った。
身体強化を発動したS級ハンターの背中が一瞬で見えなくなる。
オレも桔梗さんを追って全力でゲートに向かうのだった。
父さんが死んだ。
オレの憧れで、目標だった父さんが魔王に殺された。
全身の力が抜けて頭が真っ白になる。
「父さん、オレ、まだ父さんから教わりたいことが沢山あったのに……。みんなを、母さんを頼むって言われてもオレの力じゃ……」
受け入れ難い事実が思考を放棄させる。
「青葉! おい青葉!!」
「冬士……」
冬士に体を強く揺さぶられ、現実に引き戻された。
「俺があいつを止める。青葉はその間に師匠を連れて外に逃げろ」
親指を立てて冬士が後方を指す。
アドラメレクが放った魔槍・ブリューナクがボスフロアに大きな風穴を開けていた。
すでにダンジョンの自動修復が始まっているが、穴が塞がるまでまだ時間が掛かりそうだ。
オレは左腕を、桔梗さんは右腕を怪我しているが穴を抜けてゲートに辿り着くくらいの余力は残っている。
「止めるって……どう考えても無理だろ。冬士も見てただろ。S級の父さんと桔梗さんでも敵わなかったんだ。お前がどうこうできる相手じゃない」
「でもここで何もしなければ全員死ぬだけだ!! 例え無謀だとしても可能性がゼロじゃないならそれに賭けるしかない。ここでS級を2人も失えばそれこそ人類に勝ち目はない」
「2人とも伏せろ!」
桔梗さんの叫び声に反応してオレと冬士が同時に身を屈めた。
「掌炎の業火道」
刹那、頭上に火炎砲が駆け抜ける。
「作戦会議は終わりか? 待ちくたびれたぞ」
桔梗さんの左腕から放たれた火炎砲をアドラメレクは球体状の障壁を展開して防いだ。
桔梗さんは切断された右腕を炎で焼き、無理矢理止血したようだ。
傷口がかなり痛々しい。
「冬士、言ったはずだ。未来ある弟子をこんなところで死なせる訳にはいかないと。私が時間を稼ぐ。2人はその間にダンジョンの外に逃げるんだ」
障壁を解除したアドラメレクは空間の歪みから魔槍・ブリューナクを取り出し、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
トドメを刺そうと思えばいつでも刺せる。
こちらの戦力とアドラメレクにはそれだけの実力差がある。
それでもトドメを刺さず弄んでいるのは純粋に魔族の性格の悪さがそうさせているのだろう。
「師匠、最後までわがままな弟子ですみませんでした」
冬士が桔梗さんの命令を無視してアドラメレクに単身で突っ込んだ。
全身に炎を纏いながら詠唱する。
「我が命、燃え尽きるその刻まで篝火に捧ぐ。固有異能・篝火の砂時計ッ!」
フロアに複数の篝火が円を描くように等間隔で出現。
篝火同士を繋ぐように炎の壁が広がり、壁の内側に冬士とアドラメレクが閉じ込められた。
壁の外からだとその姿を薄らとしか確認することができない。
炎の壁で囲まれた中心、その上空には篝火の形を模した砂時計が浮かんでいる。
「炎の結界。鳥籠に閉じ込めて時間稼ぎをする算段だろうがこんなものブリューナクで突けば」
アドラメレクが魔槍で炎壁を突くがびくともしない。
「無駄だ。この技は俺が死なない限り解けることはない」
「自らの命を代償にするとは実に愚かだ」
「あいつにはそれだけの価値があるんだよ。青葉、早く行け! 30秒が限界だ!」
「くそっ! 冬士、ハンター協会から応援を呼んでくるからそれまで絶対に死ぬんじゃねーぞ!!」
「ああ、頼んだぜ。相棒」
普段冬士の口から出ない『相棒』という言葉が胸に響いた。
フロアに開いた穴を乗り越え、ふと振り返ると、宙に浮いていた砂時計が反転して火が灯った。
それが開戦の合図となり、轟音と共に衝撃波が伝わってくる。
冬士が文字通り命を燃やしながら戦っている。
「青葉、悪いが飛ばすぞ」
弟子の窮地とあってはなりふり構ってはいられない。
桔梗さんは炎を纏い、ゲートの方向に駆けて行った。
身体強化を発動したS級ハンターの背中が一瞬で見えなくなる。
オレも桔梗さんを追って全力でゲートに向かうのだった。



