「あの女、息子の名前まで一緒にしていたのね。一体どこまでイカれているの……」
神部の不祥事が報道された後、初めての面会だった。
山口静子の自宅に侵入したというニュースは、さまざまな憶測を呼んだ。
円香さんは神部を山口信子の息子だと思い込んでいる。
「なんて恐ろしいの……」
円香さんは両手をクロスし、二の腕をさすった。
「あの女の血を引く人間が、まだ存在しているなんて……」
「そんなに、怖いですか?」
「当たり前よっ! あの女の執念を引き継いでいるに決まってるんだからっ……純平、神部に気をつけるのよ? 近づいてきたら、命を狙われてると思いなさいっ!」
心を閉ざすと、不思議と穏やかな気持ちになった。
「はい」
俺はにっこりと笑って、彼女の望む言葉をかけた。
「母さん」
円香さんの目が驚きに見開かれる。感極まったかのように瞳が濡れていく。
「純平……やっと、呼んでくれた……私を、許してくれるのね?」
「はい」
先ほどと、全く同じ抑揚で言った。
幼い神部を捨て、鏑木から実の母親を奪ったあなたを、俺は絶対に許さない。
だから今は従順な息子を演じ、真実を隠す。でもいつか、ここぞという時、山口信子の息子であることを突きつける。
神部純平、心の中で、半分同じ血が流れる肉親に語りかける。
「母さん」
「純平」
「母さん」
「ああっ……純平っ……」
お前の母親、騙してやるよ。
神部の不祥事が報道された後、初めての面会だった。
山口静子の自宅に侵入したというニュースは、さまざまな憶測を呼んだ。
円香さんは神部を山口信子の息子だと思い込んでいる。
「なんて恐ろしいの……」
円香さんは両手をクロスし、二の腕をさすった。
「あの女の血を引く人間が、まだ存在しているなんて……」
「そんなに、怖いですか?」
「当たり前よっ! あの女の執念を引き継いでいるに決まってるんだからっ……純平、神部に気をつけるのよ? 近づいてきたら、命を狙われてると思いなさいっ!」
心を閉ざすと、不思議と穏やかな気持ちになった。
「はい」
俺はにっこりと笑って、彼女の望む言葉をかけた。
「母さん」
円香さんの目が驚きに見開かれる。感極まったかのように瞳が濡れていく。
「純平……やっと、呼んでくれた……私を、許してくれるのね?」
「はい」
先ほどと、全く同じ抑揚で言った。
幼い神部を捨て、鏑木から実の母親を奪ったあなたを、俺は絶対に許さない。
だから今は従順な息子を演じ、真実を隠す。でもいつか、ここぞという時、山口信子の息子であることを突きつける。
神部純平、心の中で、半分同じ血が流れる肉親に語りかける。
「母さん」
「純平」
「母さん」
「ああっ……純平っ……」
お前の母親、騙してやるよ。


