【拝啓】

 十七歳の君へ


 君は、今幸せですか?

 もし明日がなかったら、君はどうする?

 今の君は、後悔はないと胸を張って言えますか?

 僕はこの世で一番、愛しい人を殺した。
 君が生きてきた過去。これから歩むはずだった未来。その全てを、僕が奪った。
 どんなに願っても僕の犯した罪は、消えることはない。
 それでも……僕は、今も後悔している。
 あのとき、ほんの少しだけでも違う選択をしていたら。今頃、違った未来があったのだろうか。

「もしも、ひとつだけ。願い事が″なんでも叶う″としたら君は何を願う?」

 あのとき、きっと全てが止まっていた。
 少なくとも、僕の時間は。

「僕は……」

 もう一度、やり直したい。
 僕は君に逢いたい。君の本当の笑顔が見たい。そして、今度こそ君を守りたいんだ。

 僕の隣じゃなくてもいい。君が本当に幸せになれる人のそばで心から笑っていて欲しい。

 君の一番大切にしているものを、僕は知ってしまったから。

 だから、今度こそ守り抜くよ。
 君が泣かないように、後悔しないように。
 そのためなら、僕は、命も惜しくない。

 一度でいいから、君の「好き」って声を聴かせて。

 満月の夜……僕は心から願った。
 全てはその″願い″から始まった。