すごい青。すごい青だった。今誰かが僕の目を見たのなら映画のCG顔負けの綺麗な青い瞳が映っていると思った。
ここまで澄んだ青はあっただろうか。景色はたとえどんなに美しくても必ず線をなぞることが出来る。
線でなぞりその部分だけ切り取ることが出来る。だがこれはなんだ。どこに線があると言うのだ。絵の具同士が水に交わってもきっと線が見える。今僕の見ているものはどこにも線がない。はっきり言おう僕は見惚れていた。僕らはたくさんの情報に囲まれているのに、たくさんのものを見たと言うのに、幾何学模様、花火、化学物質の結晶、女体、花、森林、誰かの笑顔、どれもこれも見惚れるものになりうるポテンシャルはあった。きっと僕も見惚れていただろう。
何一つ鈍っていないこの青い空を見るまでは

ことの初めは久しぶりに会う大学の友人の誘いだった。キャンプに行くから来ないかと言い出したので二つ返事で返した。
遠出して思い出を作る、、、学生らしい。実に学生らしいじゃないか。ここんとこバイトして寝るだけの日々だったのでこの誘いはとても嬉しかった。
キャンプとは本来夏に行くものだ。そう某アニメのキャンプブームが来るまではそう思っていた。やはりアニメは偉大
自身がこの国に生まれて良かったと心の底から思う。
高原に行くと言うので防寒着を持っていた。
そして当日、高原に着き空を見上げれば冒頭の様なありさまになっていると言うわけである。
あの青を見続けて一体何分経ったのだろうか、とても長かった気もするし、短かった気もする。友人に呼ばれ、皆で集合写真を撮り、帰った。僕の頭の中ではあの青色の景色が目に焼き付いていた。どこにも形がないと言うのに、まるで目に焼印でもつけられたみたいに。
登山家が山を登る理由にそこに山があるから、と言うのは有名なセリフだが、今僕はその気持ちの先っちょを理解出来たのかもしれない。