身代わり婚で妖狐の花嫁にされたら溺愛が待っていました!?

 そう言った瞬間だった。リーンリーンと何処からか鈴の音が聞こえてきた。
 そうしたら1人の少女が屋敷から出てきた。一重の細い目でニコニコと微笑んでくる。巫女の姿をしているが、耳は獣で尻尾まで生えている。

「……あなたは?」
「ようこそいらっしゃいました。私はここの巫女でお館様のお世話係をしています。小町(こまち)と申します」
「お世話係……?」
「さあ、お屋敷に中に。お館様が首を長くしてお待ちしておりました」

 小町はそう言って、沙夜を屋敷の中に入れた。ドキドキしながら中に入る沙夜。
 どうしてだろうか? 怖いとは思わなかった。
 大広間に案内されると、奥にお館様である朔夜(さくや)との出会いだった。
 その姿を初めて拝見した沙夜は目を大きく見開いて驚く。
 限られた人しか素顔を見たことがなく、顔つきまで恐ろしいとか、醜いとか色々と噂があったが、どれも当てはまらない。
 絹のように長く美しい銀髪。キリッとした眉と金色の目。鼻筋がスッと長く、全体に整った顔立ち。耳と九本ある尻尾は獣だが、それすら神秘的。
 こんな美しい男性は見たことがない。狩衣を着ている姿すら妖艶だ。
 沙夜は胸が熱くなって、つい見惚れてしまう。そうしたら朔夜は、鋭い目つきで、沙夜をジッと見てくる。

「お主か? 私の花嫁になった者は? しかも身代わりで」
「あ、はい。申し訳ございません。大倉野沙夜と申します」

 ハッと気づいた沙夜は、慌てて土下座を謝罪をする。もうお見通しだったようだ。
 見惚れている場合ではない。これからは妻としてやっていかないといけないどころか、最悪な状況だ。本来なら激怒されて、殺されてもおかしくない。
 しかし朔夜は、顔色を1つ変えずに。

「謝罪はいらない。私の名は朔夜(さくや)。だが、私は今まで花嫁を望んでいたわけではない。あれは、村の連中が長く住み着いてほしくて勝手にやった風習だ。そこに愛はない」