「いえ……お陰様で助かりましたので。私は全く、大丈夫です。むしろ感謝しております」
「我が花嫁は謙虚だのう。しかし、それにしても沙夜の義妹は、実に傲慢で心まで醜い。私に噓までついて、自分を良く見せようとするとは」

 ギロッと睨みつけると、美也子はカッと顔を真っ赤にさせる。ガタガタと震える身体は恥ずかしさ怒りで心頭だ。
 このままでは人生の終わりだ。美也子の心は、邪な考えしかなかった。
 何を思ったか床に落ちたカッターナイフを拾い上げると、そのまま朔夜に目がけて襲い掛かる。

「死ね~この化け物が!」

 だが、朔夜に勝てるはずもない。腕で払うと、そのまま庭に突き飛ばした。ドサッと思いっきり地面に叩きつけられる。美也子はそのまま気絶する。
 父親は「ひひっ~」と悲鳴を上げると勢いよく土下座をする。

「今回の事は、娘の不始末をきちんと躾なかった父親であるお主の罪。その上、我が花嫁を深く傷つけて罪は大きい。この男を村長として居続ける間は、私は村を助けることは一切ないと思え」
「そ、そんな……それだけはご勘弁下さい」

 父親だけではなく、他の人達が必死に助けを求めた。この時代に物の怪から守ってもらえないことは、村にとったら大惨事だ。
 小さな村だからこそ、平和を保てるのはお館様である朔夜のお陰だった。

「私が今後、助けるかは村次第。どうするかはお主達が考えろ」

 それだけ言うと、沙夜を連れて去って行くのだった。取り残された村の人達が啞然としていた。
 沙夜は戸惑いながらも、朔夜の言う通りにする。村の人達が心配だったが。