美也子を庇い、沙夜に疑いを向けてくる。こんな時でも父親は、沙夜を蔑ろしてきた。

「……今、何と申した?」

 朔夜はギロッと父親を睨みつける。
 ビクッと身体を震わせる父親をよそに朔夜は口を開いた。

「お主達は、私が噓を言っていると、申すのか?」
「い、いえ……そういう意味では」
「では、どういう意味だ? お主の言葉では我が花嫁の言うことを、まんまと信じ込んだ、哀れな夫ということになるが?」

 冷たい目で父親を問いただす。しどろもどろになった父親は、必死に土下座をして謝罪をしてきた。

「申し訳ございません。私の勘違いでございました」

 だが、朔夜はそれを無視して、美也子を睨みつけた。

「お主は謝らぬのか?」
「わ、私は……何も悪いことなんて」

 美也子はそう言い返そうとするが、最後まで言えなかった。朔夜は美也子の右頬に触れた瞬間に、自分が放つ狐火で彼女を燃やしたからだ。

「いややっ~熱い、熱い」

 必死に転げまわる美也子。父親は真っ青な表情で燃える美也子を火を消そうとする。
 しかし朔夜の扱った狐火は簡単に消えるものではない。物の怪でも燃やしてしまうほどの破壊力を持つ。
 あっという間に美也子の右頬は,ただれ。炎が完全に鎮火した頃には、見るのにも絶えないほどの火傷の痕を残した。
 それには啞然としていた周りは悲鳴が上がった。沙夜も驚き過ぎて、顔色が真っ青になっていた。
 美也子もヒリヒリする頬を触れながらショックを受けて泣き出してしまった。