あれだけ醜いと思っていた顔が美しい姿となって変貌していた。
　美也子は爪を噛みながら、悔しそうな表情をしていた。だが、沙夜は気にすることもなく、深々と頭を下げた。

「お久しぶりです。お父様」

　凛とした姿に父親は戸惑っているようだったが。
　その後。大広間と案内される。上座には朔夜が座る。妻である沙夜は、その隣に。

　そうしたら機嫌を取ろうと、お酌する父親に、朔夜が、
「沙夜には止してもらおう。彼女は今妊娠中でな」と、告げる。
「はっ？」

　全員、啞然とした顔で口を開いていた。まさか生け贄として嫁いだ沙夜が、ご懐妊するとは思ってもみなかったのだろう。

「どうした？　そんなに驚くことか？」
「あ、いえ……それはめでたい。私の娘が、ちゃんとお役に立てたようで喜ばしいことです」

　そうしたら朔夜は沙夜の肩を抱くと引き寄せる。

「当然だろう？　こんな美しい花嫁を貰ったのだ。お腹の子は、いずれ私の後継者になる。今から楽しみだ」

　沙夜は恥ずかしそうに頬を赤く染める。父親の前でも、堂々と宣言してくれたのだ。
　自分の花嫁だと。
　嬉しくなる気持ちを必死に隠しながら、慎ましくする。だが、それをよく思っていない者が。美也子だ。
　顔を歪ませて、凄い表情で沙夜を睨みつけていた。
　雅和が惜しそうに沙夜ばかり見つめている。それが、余計に美也子の気に触った。

　しばらくして沙夜がお手洗いのために席を外した時だった。
トイレの外で美也子は沙夜を待ち伏せしていた。腕を組みながら、こちらに近づいてくる。