父親も沙夜の言い分を聞かずに、平手打ちをしてきた。

「この恥知らずが!? 着物ごときで、妹をイジメめるとは品がないぞ? それでも、大倉野家の人間か!?」
「ち、違います。私は、そんなことしていない」

 言い返そうとしたが、誰も自分の言うことは聞いてくれなかった。冷たい目見下されるだけ。すると美也子は、これでもかと土下座をしてきた。

「お姉様。本当にごめんさい。私が愛人の子だから、気に入らなかったですよね? もう二度としません。嫌なら、私を追い出して下さい」

 泣きながら必死に頭を床にぶつけそうになるぐらい謝罪をしてきた。
 義母と父親は慌てて、美也子を止める。
 父親は、そんな沙夜を激しくて怒鳴りつける。

「お前は、これで満足か!? 妹をこんなに追いつけて。可哀想だと思えないとは、それでも人間か?」

それを遠くから見ていた使用人達は、コソコソと陰口を囁いていた

「まぁ、ここまでさせるなんて……沙夜お嬢様は鬼畜かしら?」
「美也子お嬢様が可哀想」
「あれが大倉野家の長女とは、世も末よ。恐ろしい」

 その後も、美也子は自分の思い通りにならないと、こうやって大げさに謝罪をしてきたり、泣き出した。
 そのせいで沙夜の評判は、どんどんと悪くなる一方だった。
 大倉野沙夜は、義理の妹を必要以上にイジメる性格の悪さが目立つ。着物一つ譲らない品のなさ、その上にワガママだと。
 美也子は、そんな沙夜の姿を見て、ニヤリと笑っていた。

 そんなある日。事件が起きた。沙夜は14歳。美也子は13歳。
 美也子は、沙夜を山に忘れ物をしたから一緒に探してほしいと必死で頼んできた。