「そんなことありません。沙夜様は、誰よりも容姿と心が美しい女性でございます。それは私やお館様が分かっております。私は昔、沙夜様に助かられたことがあります」
「えっ……?」

 小町の言葉に沙夜は目を大きく見開いた。助けられてとは、どういうことだろうか?
 驚いて見ると、小町はニコッと微笑む。

「私が子ぎつねの姿で村に訪れたことがあります。お館様のお使いで。しかし、村の子供に見つかり、イジメらてしまいました。その時に、必死になって助けて下さった相手が沙夜様でございます」
「……そうだったの?」

 そんなことがあったとは覚えていない。

「覚えていなくても無理はありません。まだ沙夜様が幼い頃でしたので。ですが、とても嬉しゅうございました。狐は一度頂いたご縁は一生忘れません。お館様もそれをご覧になっていて、沙夜様に感謝しておられました」

 どうやら幼い頃に、朔夜と小町に関わっていたようだ。だから、二人は自分に優しいのだと納得が出来た。
 ただ、ご恩を返したくれたのだと。

(……そうよね。そうではないと、おかしいもの)

 自分が愛されているかと勘違いしたことが恥ずかしくなった。
 何かあるのかと思ったが、本当にあった。それは予想していたことなのに、ズキッと痛む自分が居た。分かっていたはずなのに。

 その夜。寝床の布団の上で朔夜は小町が話した事について沙夜に尋ねてきた。

「小町から聞いた。私が沙夜に優しくする事について聞いたそうだな?」
「あ、あの……申し訳ございません。失礼なことを聞いてしまいました」

 すぐさま土下座をして謝罪をする。怒らしてしまうしまったのだろうか?
 気になったとしても、まるで疑っているみたいな、ものの言い方だったかもしれない。失礼だった。