朔夜のしたら大したことではなくても、沙夜にとったら大変な出来事だった。まるで夢でも見ているようだ。

「あの……何かお礼を」

 と、言ってもお礼が出来るほど何も持っていない。財力もお供え物すら買えない。
 しかし朔夜は気にしていないようだった。

「いらぬ。私は自分がしたいようにしているだけだ」
「……ですが」
「それより、飯にしよう。お腹が空いただろう?」

 そう言って、話を逸らそうとしてきた。何も受け取ろうとしない。
沙夜は戸惑う。しかしそれは、きっかけに過ぎなかったのだ。