慣れないメイクに沙夜はドキドキしていたが、鏡を見てみると右目にある傷痕が綺麗に無くなっていた。
 あんなに深い傷で、一生治らないと思っていたのに。
 それだけではない。よく見ると、身体の傷痕まで綺麗に無くなっている。

「これは、どういうことなの!?」

 目を大きく見開いて必死に鏡を覗き込んでいると小町が、
「傷痕は沙夜様が眠った後に、お館様が治して下さいました」と、言ってきた。
「お館様が!? この傷痕を……」
「はい。本人が気にしているからとおっしゃっていました。お館様の異能に限れば治せない病気や怪我はありません」

 そんな凄い能力を持っていた事に驚いてしまった。

(彼に……そんな力が!? しかも私のために使ってくれていたなんて)

 見ないふりをしたり、引かれることは承知していた。慣れているからと言い訳をして。だが、朔夜はそれを使って治してくれた。

(どうして? 何で??)

 沙夜の頭はパニックになるところだった。諦めていたことが、一つずつ解決していく。泣いた日々から噓のようだ。
 何年かぶりに見る、本来の自分の姿に感動をしてしまう。
 沙夜は居ても立っても居られなくて、急いで部屋中の中を探した。朔夜にお礼を言いたくて。そうしたら大広間で座っていた。

「あ、あの……傷痕を治して下さいまして、ありがとうございました」

 急いで正座をすると、深々と頭を下げた。

「……お礼を言われることではない。これぐらいのことは、私の手にかかれば容易いことだ」
「ですが、とても嬉しかったです。本当にありがとうございます」

 あんなに治したかった傷痕。