最初は強張っていた沙夜だったが、彼にしがみ付くのに必死だった。二人は熱い夜を過ごすのだった。

 翌日。目を覚ますと沙夜は1人で眠っていた。眠い目を擦りながら起き上がると、産まれたままの姿だった。
 昨夜のことを思い出すと急に恥ずかしくなっていく。必死に布団で身体を隠すと、小町がニコニコしながら水が入ったコップを持ってきた。

「おはようございます、沙夜様。目覚めの飲み物をどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 驚いたが、慌ててお礼を言うと飲み物を受け取る。まだ子供なのに、随分と気が利く子だなと思った。

「敬語は不要です。すぐにお湯が入った桶とタオルをお持ちします。お風呂の用意も。必要なことがあれば、何なりとお申し付けください」
「ありがとう……ございます。あの~お館様は?」
「ただいま起きたところです。今はお風呂に行っているところですね」
「そ、そうですか」

 昨晩のことを考えたら、顔を合わせにくい。ホッとしているような、残念に思う気持ちで交差している。
 ドキドキと高鳴って、胸まで熱い。

「具合が悪いようなら、お薬をお持ちしましょうか?」
「あ、いえ。大丈夫です」

 これは薬では治せないだろう。痛くて、気だるいところはあるが、それよりも高鳴る心臓を静めたい。
 しかし、薬よりも違う意味で心臓の高鳴りが止まった。
 それは、そばらくして小町に言われて、化粧台で小町に髪とメイクをしてもらう時だった。