しゅんと落ち込んでいると、ガラッと戸が開いた。入ってきたのは朔夜だった。
 寝間着を着ていたが、それすら妖艶な美しさがある。
 はだけた肌すら色気が漂う。
 そうしたら朔夜は、沙夜のところまで来ると、そのまま覆い被さってきた。
 まさか、本当に初夜をするつもりだろうか?

「えっ? お館様?」
「……朔夜」
「えっ?」
「朔夜と呼べ。何だ? 私とは嫌か?」
「……それは」

 すると、朔夜は沙夜の右頬に触れる。ドキッとするが、その瞬間、自分の醜さに動揺する。
 思わず手で拒んでしまった。

「だ、ダメです。私は醜いので」

 しっかりと右目の部分を見られたら、気味悪がられてしまう。そうなれば、結婚を続けるどころか、離縁してしまうだろう。
 いや……あまり醜さに殺されてもおかしくない。

「いつ……私がお主を醜いとか言った?」
「……そ、それは」

 朔夜は、また沙夜の右頬を触れる。優しくあたたかい。

「……お主は醜くない。私の可愛い花嫁」

 そう言うと、そのまま唇を塞いできた。抵抗する間もなく、されたキスは嫌だとは思わなかった。
 むしろ夢中になるぐらいに、身体が熱く火照っていく。
 朔夜は唇や頬、首筋などに、いくつものキスを落していく。必死に我慢するが、彼の汗、吐息は沙夜の心を溶かしていく。