月曜日の朝。
朱里がオフィスに入ると、いつもより冷たい空気を感じた。
同じフロアに嵩がいるのに、なぜか遠くに感じる。
「おはようございます」
勇気を出して声をかけると、嵩は一瞬だけ顔を上げた。
「ああ、おはよう」
それだけ。
いつもなら軽く冗談を交わしたり、笑顔で返してくれたりするのに。
それがなくなっただけで、世界が一段階色褪せて見える。
朱里の隣の席の美鈴が、小声で囁いた。
「……壁、できてるわね」
「え……」
「平田先輩よ。あんたの“口癖”のせいじゃない?」
朱里はぐっと言葉に詰まった。
──大嫌い。
あれを繰り返すたび、本当は心臓が潰れそうなくらい苦しいのに。
でも、もう訂正できる雰囲気じゃない。
そこへ瑠奈が元気よく入ってきた。
「平田先輩! この前のセミナーの件、また質問してもいいですか?」
「もちろん。空いてる時間に声かけて」
嵩の声がほんの少し柔らかくなる。
その光景に、朱里の胸はきしんだ。
「……大嫌い」
誰にも聞こえないように机の下で呟く。
でも、本当は違う。
どうしようもなく、どんどん好きになっているのに。
朱里はそっと自分のノートを閉じた。
──このままじゃ、ほんとに嫌われちゃう。
朱里がオフィスに入ると、いつもより冷たい空気を感じた。
同じフロアに嵩がいるのに、なぜか遠くに感じる。
「おはようございます」
勇気を出して声をかけると、嵩は一瞬だけ顔を上げた。
「ああ、おはよう」
それだけ。
いつもなら軽く冗談を交わしたり、笑顔で返してくれたりするのに。
それがなくなっただけで、世界が一段階色褪せて見える。
朱里の隣の席の美鈴が、小声で囁いた。
「……壁、できてるわね」
「え……」
「平田先輩よ。あんたの“口癖”のせいじゃない?」
朱里はぐっと言葉に詰まった。
──大嫌い。
あれを繰り返すたび、本当は心臓が潰れそうなくらい苦しいのに。
でも、もう訂正できる雰囲気じゃない。
そこへ瑠奈が元気よく入ってきた。
「平田先輩! この前のセミナーの件、また質問してもいいですか?」
「もちろん。空いてる時間に声かけて」
嵩の声がほんの少し柔らかくなる。
その光景に、朱里の胸はきしんだ。
「……大嫌い」
誰にも聞こえないように机の下で呟く。
でも、本当は違う。
どうしようもなく、どんどん好きになっているのに。
朱里はそっと自分のノートを閉じた。
──このままじゃ、ほんとに嫌われちゃう。



