翌朝。
朱里は会社へ向かう途中、コンビニの前で立ち止まっていた。
「……やるって言っちゃったんだし」
心臓がやけに速く打つ。
美鈴の助言──「差し入れ作戦」。
簡単そうに聞こえたが、実際にやろうとすると手が震える。
結局、コーヒーを二本だけ買った。一本は自分用、もう一本は嵩用。
(ただの缶コーヒーだし、渡すだけ……普通のこと……)
自分に言い聞かせながら出社し、デスクに座る。
嵩は隣でPCに向かっていた。タイミングをうかがい、朱里は缶コーヒーを机の下でぎゅっと握りしめた。
「……あ、あの」
意を決して声をかける。
「はい?」
嵩が顔を上げた。優しい笑顔が返ってきて、朱里の脳内が真っ白になる。
(言え、言うんだ……!“これ、どうぞ”って!)
しかし口から出たのは──
「だ、大嫌いです!」
「……え?」
嵩が瞬きをする。
「ち、違っ……! これっ!」
朱里は缶コーヒーを勢いよく突き出した。
「え、あ、ありがとうございます……?」
受け取った嵩は困惑しながらも笑ってくれた。
朱里は顔から火が出そうになり、即座に自分のコーヒーを開けてごくごく飲んだ。
(なにやってるの私……!)
少し離れた席からその様子を見ていた瑠奈が、首をかしげる。
「先輩たち、仲良しなんだか、そうじゃないんだか……」
朱里は机に突っ伏しながら、心の中で叫んだ。
(もう“差し入れ作戦”なんて二度とやらない!……って、美鈴に言ったら怒られるんだろうなあ……)
朱里は会社へ向かう途中、コンビニの前で立ち止まっていた。
「……やるって言っちゃったんだし」
心臓がやけに速く打つ。
美鈴の助言──「差し入れ作戦」。
簡単そうに聞こえたが、実際にやろうとすると手が震える。
結局、コーヒーを二本だけ買った。一本は自分用、もう一本は嵩用。
(ただの缶コーヒーだし、渡すだけ……普通のこと……)
自分に言い聞かせながら出社し、デスクに座る。
嵩は隣でPCに向かっていた。タイミングをうかがい、朱里は缶コーヒーを机の下でぎゅっと握りしめた。
「……あ、あの」
意を決して声をかける。
「はい?」
嵩が顔を上げた。優しい笑顔が返ってきて、朱里の脳内が真っ白になる。
(言え、言うんだ……!“これ、どうぞ”って!)
しかし口から出たのは──
「だ、大嫌いです!」
「……え?」
嵩が瞬きをする。
「ち、違っ……! これっ!」
朱里は缶コーヒーを勢いよく突き出した。
「え、あ、ありがとうございます……?」
受け取った嵩は困惑しながらも笑ってくれた。
朱里は顔から火が出そうになり、即座に自分のコーヒーを開けてごくごく飲んだ。
(なにやってるの私……!)
少し離れた席からその様子を見ていた瑠奈が、首をかしげる。
「先輩たち、仲良しなんだか、そうじゃないんだか……」
朱里は机に突っ伏しながら、心の中で叫んだ。
(もう“差し入れ作戦”なんて二度とやらない!……って、美鈴に言ったら怒られるんだろうなあ……)



