午後のオフィス。
デスクに向かっても、朱里の頭の中には先ほどの光景が焼きついたままだった。
──嵩と並んで笑い合う瑠奈。
その鮮やかな笑顔が、仕事の文字をかき消していく。
「ねえ、朱里」
背後から声をかけられ、ハッと顔を上げると、美鈴が心配そうに覗き込んでいた。
「さっきからため息ばっかり。何かあったでしょ?」
「……別に」
即答しながらも、朱里は視線を逸らす。
「また“別に”ね」
美鈴は椅子を引き、朱里のデスクに腰をかけた。
「顔に書いてあるのよ、“ライバル出現しました”って」
「っ……!」
図星を突かれ、朱里は思わず声を詰まらせた。
「ほら、当たりでしょ」
美鈴はにやりと笑みを浮かべる。
「話してみなさいよ。親友なんだから」
朱里はしばらく迷った末、ぽつりと口を開いた。
「……さっきね、ランチの帰りに。嵩先輩と歩いてたら……瑠奈が現れて」
「瑠奈ちゃんって、新人の?」
「そう。で、“週末に展示会、一緒に行ってください”って……」
そこまで言って、朱里は言葉を濁した。
美鈴は腕を組み、ふむふむと頷く。
「で、嵩先輩は?」
「……行くって」
朱里の声は小さく、机に吸い込まれていった。
一瞬の沈黙の後、美鈴が口を開く。
「なるほど。つまり、ライバルは攻めてきてるわけね」
朱里は悔しさを滲ませながら「……そう」と答えた。
「だったら対抗策を考えなきゃ」
美鈴は頼もしげに笑った。
「強がって“嫌い”ばかり言ってたら、本当に取られるわよ?」
その言葉が朱里の胸に鋭く突き刺さる。
わかっている。けれど──素直になれる自信がない。
朱里は唇を噛みながら、小さく頷いた。
デスクに向かっても、朱里の頭の中には先ほどの光景が焼きついたままだった。
──嵩と並んで笑い合う瑠奈。
その鮮やかな笑顔が、仕事の文字をかき消していく。
「ねえ、朱里」
背後から声をかけられ、ハッと顔を上げると、美鈴が心配そうに覗き込んでいた。
「さっきからため息ばっかり。何かあったでしょ?」
「……別に」
即答しながらも、朱里は視線を逸らす。
「また“別に”ね」
美鈴は椅子を引き、朱里のデスクに腰をかけた。
「顔に書いてあるのよ、“ライバル出現しました”って」
「っ……!」
図星を突かれ、朱里は思わず声を詰まらせた。
「ほら、当たりでしょ」
美鈴はにやりと笑みを浮かべる。
「話してみなさいよ。親友なんだから」
朱里はしばらく迷った末、ぽつりと口を開いた。
「……さっきね、ランチの帰りに。嵩先輩と歩いてたら……瑠奈が現れて」
「瑠奈ちゃんって、新人の?」
「そう。で、“週末に展示会、一緒に行ってください”って……」
そこまで言って、朱里は言葉を濁した。
美鈴は腕を組み、ふむふむと頷く。
「で、嵩先輩は?」
「……行くって」
朱里の声は小さく、机に吸い込まれていった。
一瞬の沈黙の後、美鈴が口を開く。
「なるほど。つまり、ライバルは攻めてきてるわけね」
朱里は悔しさを滲ませながら「……そう」と答えた。
「だったら対抗策を考えなきゃ」
美鈴は頼もしげに笑った。
「強がって“嫌い”ばかり言ってたら、本当に取られるわよ?」
その言葉が朱里の胸に鋭く突き刺さる。
わかっている。けれど──素直になれる自信がない。
朱里は唇を噛みながら、小さく頷いた。



