土曜の午後。
朱里は駅前に新しくできた雑貨屋に立ち寄っていた。
特に買いたいものがあるわけじゃなかったけれど、休日の気分転換にとふらりと足を運んだのだ。
(……あ、あのマグカップかわいい)
心が少し和んだのも束の間、店を出て歩き出した時だった。
大通り沿いのカフェの前を通りかかり、ふと視線を横に向けた朱里は、思わず立ち止まった。
ガラス越しに見えたのは、窓際の席に並ぶ二人の姿。
望月瑠奈と、そして──平田嵩。
瑠奈は両手でカップを包み込みながら、楽しそうに身を乗り出して笑っていた。
対する嵩も、頬を緩めて穏やかに相槌を打っている。
(……なに、これ)
頭の中が一瞬で真っ白になる。
ただ同僚同士でお茶しているだけだと、理屈ではわかる。
でも、朱里の胸はチクリと痛んだ。
瑠奈の笑顔はあまりに眩しくて、嵩の視線はあまりに優しかった。
それを外から眺めている自分が、どこか惨めに思えてしまう。
「……別に、関係ないし」
つい口に出した声は、かすかに震えていた。
けれど足は動かない。
ガラスに映る自分の顔が、どこか泣き出しそうに見えてしまい、慌ててうつむいた。
その時、店の中で嵩がふと窓の外を見やった。
朱里は心臓が飛び出しそうになり、咄嗟に柱の影へ隠れた。
(危な……見られるところだった……!)
息を殺しながら、朱里はその場から早足で離れた。
胸の奥には、消化できない苦い感情が渦巻いている。
(なんで……私、こんなに動揺してるの?ただ一緒にお茶してただけなのに……)
答えはわかっている。
でも認めてしまったら、自分の「大嫌い」という口癖が、すべて嘘になるから。
朱里は小さくため息を吐き、背を丸めて歩き続けた。
その背中は、いつもより少しだけ重たかった
朱里は駅前に新しくできた雑貨屋に立ち寄っていた。
特に買いたいものがあるわけじゃなかったけれど、休日の気分転換にとふらりと足を運んだのだ。
(……あ、あのマグカップかわいい)
心が少し和んだのも束の間、店を出て歩き出した時だった。
大通り沿いのカフェの前を通りかかり、ふと視線を横に向けた朱里は、思わず立ち止まった。
ガラス越しに見えたのは、窓際の席に並ぶ二人の姿。
望月瑠奈と、そして──平田嵩。
瑠奈は両手でカップを包み込みながら、楽しそうに身を乗り出して笑っていた。
対する嵩も、頬を緩めて穏やかに相槌を打っている。
(……なに、これ)
頭の中が一瞬で真っ白になる。
ただ同僚同士でお茶しているだけだと、理屈ではわかる。
でも、朱里の胸はチクリと痛んだ。
瑠奈の笑顔はあまりに眩しくて、嵩の視線はあまりに優しかった。
それを外から眺めている自分が、どこか惨めに思えてしまう。
「……別に、関係ないし」
つい口に出した声は、かすかに震えていた。
けれど足は動かない。
ガラスに映る自分の顔が、どこか泣き出しそうに見えてしまい、慌ててうつむいた。
その時、店の中で嵩がふと窓の外を見やった。
朱里は心臓が飛び出しそうになり、咄嗟に柱の影へ隠れた。
(危な……見られるところだった……!)
息を殺しながら、朱里はその場から早足で離れた。
胸の奥には、消化できない苦い感情が渦巻いている。
(なんで……私、こんなに動揺してるの?ただ一緒にお茶してただけなのに……)
答えはわかっている。
でも認めてしまったら、自分の「大嫌い」という口癖が、すべて嘘になるから。
朱里は小さくため息を吐き、背を丸めて歩き続けた。
その背中は、いつもより少しだけ重たかった



