週末の昼下がり。
人で賑わう駅前の大型ショッピングモールに、嵩と瑠奈の姿があった。

「ここ、最近できたんですよ。結構お店も多いから、一度来てみたかったんです」
瑠奈が嬉しそうに先を歩き、嵩はその後ろを追いかける。
彼女のワンピースが軽やかに揺れるのを、嵩はつい目で追ってしまった。

まず立ち寄ったのは、アパレルショップ。
「嵩さん、こういうジャケット似合うと思いますよ」
「え、俺に?」
半信半疑で試着室に入ると、案外悪くない。
鏡に映る姿を見ていると、瑠奈が横から顔を出した。
「やっぱり!少し大人っぽく見えます」
「……そうか? なんか照れるな」
普段職場では見せないやりとりに、2人の間に柔らかな空気が流れる。

次に雑貨店へ。
瑠奈は可愛いマグカップや小物を手に取り、子どものように目を輝かせている。
「これ、ペアで揃えたら可愛いですよね」
「お、おう……」
その言葉に嵩の心臓が跳ねる。
彼女にとっては何気ない一言でも、嵩には特別な意味を帯びて聞こえた。

最後に立ち寄ったのは書店。
「映画の原作、ここにありました!」
「へぇ、読むのも好きなんだな」
「はい。嵩さんは?」
「俺はビジネス書ばっかりだな」
「真面目すぎです。今度、おすすめ貸しますね」
笑う瑠奈の横顔を見て、嵩はふと「恋人同士みたいだな」と思ってしまう。

夕方になり、モールの外に出ると、空はオレンジ色に染まっていた。
「今日はすごく楽しかったです。また一緒に来てもいいですか?」
瑠奈の問いかけに、嵩は迷わず頷いた。
「もちろん」
その返事に瑠奈は小さく微笑む。

賑やかな休日のひとときは、2人の距離をまた少し縮めていた。