昼下がりのオフィス。
嵩はパソコン画面を見つめながらも、頭の中は仕事以外のことでいっぱいだった。
(……朱里、今朝のあれ、やっぱり気にしてるよな)
彼女の「大嫌い!」は、いつもの強がりなのか、本気なのか。わからなくなる瞬間が増えていた。
それでも朝の失言のあと、朱里がわざと自分を避けているように見えてしまう。
「平田先輩」
不意に背後から呼びかけられて振り返ると、瑠奈が笑顔で立っていた。
「昨日のセミナー、お疲れさまでした。先輩の話、やっぱりすごくわかりやすかったです」
屈託のない褒め言葉に、嵩は思わず苦笑した。
「いや、大したことないよ。むしろ望月さんが盛り上げてくれたおかげだ」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです」
瑠奈の笑顔は真っ直ぐで、彼を疑いなく慕っているのが伝わる。
……なのに、朱里は。
どうしてあんなふうに突き放すのか。
(もしかして、本当に俺のこと嫌いなのか?)
胸の奥に、言いようのない重さが広がっていく。
ふと視線を向けると、デスクに戻った朱里が無理に仕事へ集中しているのが見えた。
その横顔は、いつもより少し硬い。
声をかけたい。
でも、何を言えばいいのかわからない。
そんな彼の迷いを知らないまま、オフィスの空気だけが淡々と流れていった。
嵩はパソコン画面を見つめながらも、頭の中は仕事以外のことでいっぱいだった。
(……朱里、今朝のあれ、やっぱり気にしてるよな)
彼女の「大嫌い!」は、いつもの強がりなのか、本気なのか。わからなくなる瞬間が増えていた。
それでも朝の失言のあと、朱里がわざと自分を避けているように見えてしまう。
「平田先輩」
不意に背後から呼びかけられて振り返ると、瑠奈が笑顔で立っていた。
「昨日のセミナー、お疲れさまでした。先輩の話、やっぱりすごくわかりやすかったです」
屈託のない褒め言葉に、嵩は思わず苦笑した。
「いや、大したことないよ。むしろ望月さんが盛り上げてくれたおかげだ」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです」
瑠奈の笑顔は真っ直ぐで、彼を疑いなく慕っているのが伝わる。
……なのに、朱里は。
どうしてあんなふうに突き放すのか。
(もしかして、本当に俺のこと嫌いなのか?)
胸の奥に、言いようのない重さが広がっていく。
ふと視線を向けると、デスクに戻った朱里が無理に仕事へ集中しているのが見えた。
その横顔は、いつもより少し硬い。
声をかけたい。
でも、何を言えばいいのかわからない。
そんな彼の迷いを知らないまま、オフィスの空気だけが淡々と流れていった。



