「きゃあっ!」

 春菜の小さな手が弾かれて、体勢を崩した。
 ここは、白龍の龍の(ほこら)
 神力(しんりょく)の媒介者として、春菜が光河(こうが)とともに白龍の宝玉に手を触れたところ、光の力に押し返されてしまったのだ。

「いった……」

「大丈夫かい?」

 光河が彼女の掌を見ると、火傷したように赤く腫れ上がっていた。
 これは、霊力に対して神力が大きすぎて耐えられなかったという証拠だ。

「今日は疲れているみたいだね。早く帰って手当てをしよう」

「申し訳ございません……」

 春菜は恥ずかしそうに俯いて、唇を噛む。細い肩が微かに震えていた。
 光河は彼女が罪悪感に苛まれているのだと感じて、励ますように優しく彼女の頭を撫でる。

「君が謝ることはない。人間が神の世界に慣れるまでには時間がかかるものだ。鍛錬を続けていれば、そのうち問題なく行えるだろう」

「はい……」

 春菜は潤んだ瞳で光河を見た。その悲しげな視線に彼の胸は締め付けられて、このいじらしい花嫁を己が守らなければと改めて思った。
 だが、可憐な彼女の中は、どす黒い感情が渦巻いていた。