「っ……!」

 部屋で術式を唱えている春菜の端正な顔に、一筋の切り傷が駆け抜けた。ぴりっとした痛みに舌打ちをする。

「破られたわ……」

 どうやら全ての式神が消え去ったようだ。
 幸いにも、強い呪い返しのようなものは感じなかったが、誰かが式神の術者を探っている気配は感じる。

「ま、わたしが術をかけたって分かっても、どうすることもできないと思うけど」

 春菜はくすりと笑った。
 白龍のほうは順調だ。じわじわと『毒』が効いてきている。
 紫流(しりゅう)という生意気な側近が少々うるさいが、機を見て殺せば問題ないだろう。

「早くお姉様に会いたいわぁっ!」

 春菜の笑顔がぐにゃりと歪んでいく。