「ふぅ……」

 光河は自室に戻るなり、柔らかい布団に倒れ込んだ。紫流(しりゅう)が主の疲弊を察して、事前に敷いてくれたようだ。
 枕元にある盆の上に、煎じ薬が置いてある。湯気からほんのりと漂う薬草の香りが、彼の気持ちを落ち着かせた。

 今日は、いつもより疲労が激しい。
 普段は一人で行う儀式を、花嫁も連れた状態だったからだろうか。

 いや、本来なら媒介者の花嫁がいることで、神力も精神も安定するはずなのだが。

(初めての儀式なので、単に慣れていないだけか……?)

 たとえ千年に一人の霊力の持ち主だとしても、神――しかも龍神の力を直接受けるとなると、肉体や精神の負担は相当過酷なものだろう。まだ霊力を上手く操れなくても仕方がない。
 彼女とは、これから長い年月を共に過ごすのだ。きっと霊力もすぐに安定するだろう。

 だが、喉元になにかが引っかかるような感覚がある。
 この違和感は一体どこから来るのだろうと彼は首を傾げた。

「……苦い」

 いつもは甘く感じる煎じ薬も、今日は少し不快に感じた。