「白龍はあの(・・)花嫁に媒介して貰ってんのか……」

 不意に白龍の顔が思い浮かんで、舌打ちをする。
 闇と光の力は均衡が取れていないといけない。おそらく、今後の白龍の神力は安定していくだろう。
 もし、こちら側が力の調整をしくじったら、人間界に大惨事が起こるかもしれない。

 彼は少し思案したあと、

「……ま、秋葉なら大丈夫だろ」

 あっけらかんと呟いた。秋葉は相変わらず霊力がないし、まだ芽生える気配も見えない。
 しかし、それでもなんとかなるという根拠のない自信があった。

 なぜなら、秋葉を信じているから。

 彼女の顔を見ると、不思議と安心感が生まれる。側にいると、気分が落ち着く。
 これは二人の相性が抜群に良いということだ。媒介として本格的に手伝って貰う前なのに、もう彼女を通じて魂が安定しているような気がした。


 ただ、一つ気になることがある。
 花嫁を娶って穏やかになっているはずの白龍の神力に、妙な違和感を覚える。それは、清流に一滴だけ墨汁を垂らしたようなほんの僅かな不穏だが、やけに胸騒ぎがするのだ。

「あの嫁……怪しいな」

 白龍の馬鹿があの(おんな)に騙されたのなら笑い飛ばしてやるところだが。

「もし秋葉を傷付けたら――」

 憂夜の瞳の奥が、ぎらりと鋭い光を放った。
 その時は、絶対にただではおかない。