黒の花嫁/白の花嫁


「兄上」

 そのとき、彼の頭上から聞き覚えのある声が聞こえた。

「お前は……夏樹……!」

 顔を上げると、そこには過去に強引に家門から追放した弟がいた。
 夏樹は少し寂しそうな顔をして、諭すように言う。

「もう、止めましょう。我々の霊力は、世のために奉仕するものです。決して私利私欲に利用してはなりません」

「うるさいっ! 力のある者が支配してなにが悪い!?」

 夏純は憎々しげに弟を睨み付けた。腸が煮えくり返って、体内の血ががますます沸騰していた。
 今回の件は、きっと(こいつ)が仕組んだに違いない。兄から当主の座を奪おうと、卑劣な手を使ったのだ。

 夏樹は変わらぬ兄を見て、失望したように首を横に振った。

「これまでお疲れ様でした。これからは僕が四ツ折の里を守りますので、ご安心して引退してください」

「なんだと……!?」

「俺が頼んだんだよ。やっぱ、手前の力は信頼できる奴に任せたいからなー」と黒龍。

「兄上、僕の幼い頃の夢は、貴方と一緒にこの地を守護することでした。……もう、それは叶うことはありませんが、里のために精一杯やらせていただきます」

「は………………」

 目の前が真っ黒になる。
 これが、四ツ折夏純の命が終わった瞬間だった。
 霊力者としての、生命が。