「さっさと散るのだな」と、彼が踵を返した折も折、

 ――ドン!

 にわかに、里の外れの森からけたたましい爆発音がした。
 すると、バリバリと深いひびが入る音、烏の大群が大声で鳴きながら一斉に飛び立つ音、竜巻のような強烈な突風、突然の雷雨。
 全てが同時に巻き起こった。

 その場の全員が呆気に取られて遠くの山々を見つめていると、

「ぐあ……ああぁぁ……!」

 突如、四ツ折の当主が胸を掻きむしりながら跪いた。

(なんだこれは……!)

 身体中が熱い。肉体の核が、溶岩に変化してしまったかのようだ。
 血管の隅々までどろりと熱いものが伝わっていっている。心臓も、喉も、脳味噌も……焼かれていくのを感じる。

「うっ……うあ…………」

 彼はこの灼熱の正体を察していた。
 黒龍の神力だ。

 長女を通じてあの(おとこ)に神力の放出を再開させてから、これまでの数倍もの力が流れ込んできた。
 それがあまりに多すぎて、夏純の霊力の器を超え、ついに決壊してしまったのだ。
 あの大音声の正体は、四ツ折の里の結界の崩壊だった。