「言葉通りだ。お前の夫のせいで、こっちは迷惑を被っているのだ。妻のお前が何とかしろ」

「は? 話が見えないんだけど」と、秋葉は父親をギロリと睨み返す。意味不明なことを一方的に言って、あまつさえ高圧的な態度にひどく腹が立った。

 この(ひと)は、何も変わっていない。昔から自分の面子しか考えていないのだ。
 改めてそう実感すると、目眩がしてきた。自分は、こんな詰まらない人間から認められようとして鍛錬を続けていたのかと思うと、虚しさが胸を侵食していく。

「おい! 聞いているのか、秋葉!」

 夏純は拳で地面を強く叩いて、声を荒げる。

「無能なお前でも、この父の役に立つことを教えてやっているのだ! 有り難く――」

「てめぇっ〜〜! なに勝手に俺の秋葉を呼び出してるんだぁ〜〜?」

 そのとき、突風が湧き起こったかと思ったら、突如黒龍が二人の前に現れた。

「わっ! びっくりした!」

 秋葉は心臓を押さえ、

「チッ……」

 夏純は顔を顰めて舌打ちをした。

「秋葉、何もされていないな!?」

 憂夜(ゆうや)は義父の存在など無視して、妻の両肩を掴んで怪我がないか確認する。

「別になにもされていないけど……。これって、どういうこと?」

 秋葉は憤りを隠さない父を見やりながら尋ねた。