「今日の『でぇと』は凄く楽しかったわ。ありがとう」

「あぁ、俺も楽しかった。また行こうな」

「うん! 叔父さんとも会えて本当に良かったわ……」

 秋葉は懐かしむようにふっと表情を柔らかくした。
 叔父は父から冷遇されて、皇都で苦労していると風の便りで聞いていた。でも、元気にやっていて良かった。
 遠く離れていても、自分のことを気にかけてくれている人がいたのは心強かった。

 実の両親とは縁を切った。
 代わりにと言ったら身勝手かもしれないけど、これからは自分を大切にしてくれた叔父を大事にしようと思った。

「お二人とも……皇都へ遊びに行ったんですか……?」

 そのとき、背後から瑞雪の恨めしそうなか細い声が聞こえてきた。

「わっ!」

「お前っ、心臓に悪いぞ!」

 知らぬ間に這い寄っていた雪女に、二人は飛び上がる。

「ご主人様も奥様もずーるーいーー! 私も行きたかったのにぃぃぃぃ〜!」

 次の瞬間、瑞雪は片手ずつ秋葉と憂夜の胸ぐらを掴んで、ぐらぐらと上半身を揺らした。

「お前こないだ行ったばっかだろ。しかも小遣い全部使ったとかで狐宵に金借りてたし」

「だってぇぇぇー! ご主人様の賞与が少ないからぁ〜〜〜!」

「吹雪で俺の盆栽を全滅させた奴に大金払うわけねぇだろ!」

「あれは事故なのにぃ〜」

「嘘こけ! 庭の打ち水が面倒くせぇからって、雑に猛吹雪を起こしやがって」

「ごめんごめん。次は皆で行きましょう?」

「わあぁぁぁん奥様ぁぁぁぁ! ――ところで、今日のお土産はなんですかぁ〜!?」

「あっ…………」

 叔父との再会で、すっかり忘れていた秋葉であった。



 ぎゃんぎゃんと泣き喚く瑞雪の少し後ろから、狐宵と白銀が冷静な瞳で彼女を眺めていた。

「良いですか、シロ? あんなみっともない大人になってはいけません」

「うん。ぼく、あんな恥ずかしい大人にはならない」