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「おかえりなさい」
満面の笑みで出迎えてくれた花嫁に、憂夜は嫌な予感がして背筋が寒くなった。
「ねぇ、下界に何か用があったの?」
案の定。どうやら彼の行動は筒抜けのようだ。秋葉は笑顔を崩さないが、目が笑っていない。
「……なんで、そのことを秋葉が知っているんだ?」
「え? だって、瑞雪が言っていたから」
「あいつ……」
憂夜は苦い顔をして、小さく舌打ちをした。狐宵を通じてさんざん口止めをしていたのに、あのお喋り雪女め。
「あっ、勘違いしないで? 私が無理矢理に聞き出したのよ。なんか、そわそわしていたから」
「その『そわそわする』っつー態度を、改めさせなければいけねぇな」
「もうっ、瑞雪はそこがいいのよ。面白い子でしょう?」
秋葉はすっかり瑞雪とも打ち解けていた。互いに明るくさっぱりした性格をしているからか、とても馬が合うようだ。
「私、雪女って、もっとクールで口数が少ないって想像していたから。あんな南の島に住んでいそうな妖だなんて思わなかったわ」と、彼女はくすくすと笑った。
憂夜も釣られてくつくつと笑う。
実際に瑞雪は南の島に住んでいた時期があって、あまりの暑さに溶けかけて泣く泣くそこを去ったらしい。本人は南のほうが性に合ってたようだが、雪女という体質には勝てなかったようだ。
「たしかに瑞雪は――」
彼がこのままの流れで話を逸らそうとすると、
「もしかして、下界で問題でも起きたの?」
すかさず彼女が遮って質問をした。

