「あっ! 憂夜ーっ! おはよう!」

「黒龍様、おはよう〜」

 憂夜の姿に気付いた秋葉が、白銀を肩に乗せて駆け寄って来る。二人はもうすっかり打ち解けたようだ。

「おはよう、二人とも。朝から頑張ってるな」

「まあねー」

「あのね、昨日ここに来てから、身体の調子がすっごく良いの! なんか、肉体の芯から生命力が溢れてくる感じ? 四ツ折(よつおり)にいた頃より調子がいいみたい」

「そりゃ良かった。秋葉とこの土地は相性が良いみてぇだな」

「うん!」

 生きとし生けるものの全てには『生命力』や『気』というものが宿っている。
 それには木・水・火・風・水……などの様々な属性が複雑に絡み合って、互いに影響し合っているのだ。

 ここは黒龍の気で満ちていて、それは秋葉にとって心地良いものだった。

「この調子で頑張れと言いてぇところだが……」

 憂夜は途中で口を噤んで、ぐるりと中庭を見渡した。
 美しく整えられていた砂利は乱され、石造りの灯籠は物理攻撃を受けたのか上部が手水鉢(ちょうずばち)の中に落下していた。

「あっ……」

 結構な惨状に気付いて、固まる秋葉。

「明日からは、もっと広い場所でやろうな。シロ、あとで道場を案内してやれ」

「はぁ~い!」

「ご、ごめんなさーい!」