「秋葉、紹介する。俺の側近の狐宵と瑞雪。二人とも今後なにかと力になってくれるだろう」
「狐宵です。私は狐の妖でございます。どうぞ、お見知りおきを」
笑顔で恭しく一礼をする狐宵。
「瑞雪で〜っす。所謂、雪女ってやつですね。奥様の身の回りのお世話をさせていただきま〜っす。蒸し暑い日なんかは、びゅんびゅん冷やしますよ。でも夏は苦手です」
そして明るい口調だがどこか棒読み、しかも無表情の瑞雪だった。
「私は秋葉よ。迷惑を掛けることも多いと思うけど、これからよろしくね」
『奥様』という名称に身体がむずむずしたが、緩む口元を引き締めて礼儀正しく挨拶を返す。なかなか癖の強そうな二人だが、白銀も含め仲間というものは良いものだと思った。
四ツ折家では針の筵だったので、己に好意を向けてくれるひとなんて新鮮で、じわりと嬉しさが込み上げてくる。
「奥様?」
瑞雪が秋葉にすすっと近寄って、手の甲で口元を隠しながら大声で言った。
「ご主人様ったら、白龍様の花嫁が決まった日から『念の為、俺も嫁取りの準備をしておこう』って、そりゃもう長い年月をかけて迎え入れる用意を進めていたんですよ〜。相手は全然決まってないのに……ぷぷぷ」
「こら」
「いたっ!」
トン――と憂夜が瑞雪の脳天に手刀を落とした。彼女は蹲って、じんじん痛む頭を両手で押さえている。
「余計なことを言うな」
「だってぇ〜、本当のことなのにぃ〜」
「おい、狐宵! こいつを外につまみ出せ!」
「かしこまりました、憂夜様」
「ぎゃあっ!」
狐宵はひょいと瑞雪を脇に抱えて、部屋を出ていった。
「!」
擦れ違い様、一瞬だけ彼と目が合う。
ほんの僅かだったが、彼の瞳の奥からなにやら冷たいものを感じた。

