「うわぁ〜……素敵……」
初めて見るモダンな装飾の洒落た空間に、秋葉は思わず感嘆の声を漏らした。
屋敷に入って先ず案内されたのは、秋葉の部屋だ。そこは今日まで住んでいたオンボロの納家よりも広かった。
もう、あの古くて黴臭い部屋に住まなくていいのだと思うと、清々した気分だ。
意外にも、秋葉の部屋の内装は、皇都で流行っている洋館の意匠だった。
畳ではなく板張りの床はよく磨かれており、秋葉の足下を反射していた。脚のある机と椅子は四ツ折家にはなかったもので、流線型の女性らしい雰囲気に心躍った。
さらに床敷きの布団ではなく、秋葉の膝くらいの高さの寝床がある。
その形も掛けられている布団も見たことのない柄でとびきり可愛いが、こんな高い場所で安眠できるのかしらと少しばかり不安になった。
「悪い。急だったから十分な準備ができなかった」
「十分だわ……。こんなに可愛い部屋、見たことないもの!」
「そりゃ良かった。下界で流行ってるって言うのを取り寄せたんだ」
「よくこんな短時間に用意できたわね」と、秋葉は目を丸くして首を傾げる。
さっきまで憂夜は四ツ折の屋敷にいて、ここに来るのもほとんど一瞬だったと思うけど……。

