憂夜は葛藤する秋葉の様子を、しばらくのあいだ目を細めながら見つめていた。
 彼女が少しだけ落ち着いたところで、口火を切る。

「俺はお前の魂――度胸と根性が気に入った。その手にできている豆は、長いこと鍛錬に励んでいた証拠だろ? どんな逆境にいても、腐らずに努力を続けられる女はイイ女だ。霊力なんざ、後でどうにでもなる」

「どうにでもなるって……」

「俺の神力(しんりょく)を、お前に分ければいい」

 秋葉は呆れまじりの納得いかなそうな顔を見せるものの、心の中は嬉しさが溢れていた。
 こんなに褒めてもらったのは、いつぶりだろうか。
 なによりも、未だ霊力がないという結果(・・)ではなくて、これまでの己の鍛錬の過程(・・)について言ってくれたことが深く広く胸に響いた。

 かつて霊気があり余っていた頃は、よく両親に褒められた。「お前は千年に一人の力を持っている」って。
 でも、それだけ。父も母も、自分の内面のことや、霊力に磨きをかけようと毎日特訓していたことも、一度たりとも褒められたことはない。

 だけど、この神様(ひと)は――……。