春菜だったものが、一つずつ黒龍が打った(くさび)を外していく。憎しみはますます増大して、影の闇が深く大きくなった。

「こうなったら……」

 秋葉はすうっと大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。そして、身体中を巡るありったけの霊力を右手の拳に集める。

「はああぁぁぁぁっ!!」

 ドンと鈍い音が鳴り響いて、鱗の障壁が一瞬大きく揺れた。

「な、なにをしているんだい?」

 その姿を、若干引き気味に見つめている光河。人間より長く生きている彼でも、こんな乱暴な女性を見るのは生まれて初めてで、目を疑った。

「気の力が無理なら、物理でこじ開けるまでよっ!! 霊力で肉体を強化すれば、なんとか……!」

「ぼくも手伝う!」

 すると白銀が秋葉の懐から出てきて、

「たああぁぁぁっ!」

 いつの間にかくすねていた、白龍の宝玉を壁に向かって思い切り投げ付けた。