黒の花嫁/白の花嫁


 秋葉と光河、二人が同時にゆっくりと大きく目を見開いた。
 白龍の(あけぼの)色の瞳が照らし出される。それは黄昏色の黒龍とは対照的に、夜から朝へと変化する、光を運ぶ色だった。

 白龍の神力が物凄い速さで膨らんでいく。

 ――これは、『共鳴』。
 龍神と花嫁の魂が一つになるとき、その奇跡が起こる。

 今や二人は、「春菜を倒す」という一つの目標で、心がぴたりと重なっていた。
 それは、大きな気の塊となって増大していく。
 そして。

 ――パァン!

 秋葉の肉体から、まばゆい光が弾けた。
 おびただしい量の霊気が、彼女の核に集約され、破裂したのだ。

「即ち、私も白龍の宝玉の主の一人……!」

 次の瞬間、春菜の持つ白龍の宝玉に閃光が溢れ出した。光は熱を持って彼女に降り掛かっていく。

「ぎゃあああぁぁぁぁぁっ!!」

 邪の器である彼女は、純潔な白い気の灼熱の炎で焼かれ、玉からは黒色の霧が晴れていった。

「霊力が……戻った…………!」

 憂夜は、秋葉の神々しい姿に見惚れていた。
 それは、千年に一人の、彼女だけの霊力。

「まぁ……秋は……実るよな……」

 彼は力が抜けたように上擦った声で呟く。
 これは秋葉の長年の鍛錬の(たまもの)だ。どんなに酷い状況でも、諦めずに努力してきた結果なのだ。

 だから、本来なら喜ばないといけない。
 だが、彼の心は悲しみに沈みかけていた。

 愛する人の輝かしい変貌を祝福したい。
 しかし、今の彼にはそんな余裕など皆無だった。

 秋葉が再び覚醒できたのは、まさしく白龍の神力のおかげだ。
 それは、白龍と正式に契約を交わしたということ。

 彼女は、黒ではなく――白の花嫁だ。