「なにを……ごちゃごちゃと……」
春菜の憤りは限界まで達していた。思い通りにならないことが物凄く歯痒くて、千切れるくらいに唇を噛んだ。
「絶対に許さないわ……」
次の瞬間、彼女の体内に圧縮された邪の気配が一気に膨れ上がった。彼女の心はもう清らかさなど少しも残っていなく、粘ついたどす黒い泥だけが折り重なっていた。
黒い闇が辺りを覆い、地鳴りが轟く。黒色の電撃が、蜘蛛の巣のようにじわじわと部屋中に張り巡らされる。
「全員殺してやるっ!!」
電撃がバチバチと連続で弾けて、鼓膜を攻撃するような金属音が鳴る。
そして、憎悪の塊を凝縮した空間中の黒いものが全て、猛烈な速さで秋葉に向かっていった。
「黒鱗!」
憂夜が再び鱗の障壁を起こした。半球を作って、秋葉をすっぽりと包み込んで保護をする。
すぐに激突。
密度の高いもの同士がぶつかる鈍い音がする。衝撃で部屋全体が激しく揺れる。
春菜は今回も白龍の宝玉の力を使って攻撃してきていた。
「くそっ……」
憂夜は両手を前に突き出して鱗の障壁を守った。だが、徐々に押されていく。春菜は白龍の神力に加え、己の邪の力も大量に吐き出しているようだった。じりじりと圧されて、彼の額に汗が滲む。
「憂夜、大丈夫よ」
ふいに、隣で秋葉が呟いた。この場にそぐわない穏やかな口調に憂夜が驚いて彼女を見ると、またもや額の白龍の御印が強く光を放っていた。
「あの宝玉には、私の血が入っている。即ち……」

