黒の花嫁/白の花嫁






「白龍っ!!」

 バンッ、と大きな音を立てて勢いよく襖が開く。

 その光景を見て、秋葉は絶句し、しばらく動けなかった。
 そこには、床に倒れている青年――光河と紫流、そしてニタリと不気味に笑う妹の姿があったのだ。
 彼らの周囲には煙のような黒い影が纏わりついて、鉄臭いつんとした匂いが漂っていた。

「春菜っ!! あんた、なにやってんの!?」

 彼女は目を剥いて、思わず大声で怒鳴り付けた。この異様な空間は、春菜が作り上げたものだとすぐに分かった。

 しかし春菜は久し振りに再会した姉のことなんて一顧だにせず、すすすっと憂夜に近寄って小さな手で彼の腕を掴む。

「黒龍様ぁ〜! お待ちしておりましたわぁ〜! またお会いできて嬉しいで――」

 だが、憂夜は彼女の挨拶を最後まで聞かずに、手を思い切り弾いて振り払った。そしてきっと睨み付けて、低い声で凄むように言う。

「お前の姉貴が質問しているじゃねぇか。答えろや」

「あら……」

 春菜は初めて(それ)を認識したかのように目をぱちくりさせて、

「わたし、黒龍様とお話してるのに……」

 わざとらしくしなをつくって困り顔をしてみせた。

 秋葉はそんな挑発には動じない。春菜に自分の霊力が移ってからというものの、こんなこと日常茶飯事だったのだ。ただ呆れ顔でため息をつきながら妹を見やった。

「じゃあ、俺が訊く。お前は一体なにをやってるんだ?」

 これ以上姉への無礼を咎めても話が進まないと悟って、憂夜が代わりに尋ねる。

「なにって……」

 春菜は可愛らしく首を傾げて、くすりと上品に笑う。

「謀反を起こそうとしていた白龍様の臣下に、軽いお仕置きをしてただけですわ」

「軽いお仕置きですって……!? こんなの、ただの虐待じゃない!」

「は……?」

 声を荒げた秋葉に、一瞬で春菜の表情が消える。

「あんたは『特別だ』って言われ続けたから理解しづらいかもしれないけど、一人一人が意思を持って一生懸命生きてるの。だから、互いに尊重しないといけないわ。命は遊びじゃないのよ!」