「気付かないフリずっとしてて、ゴメン。
この事が最大の後悔。
――背負う自信がなかった。あの街で。
それに、もっと後でいいと思った。いつでも出来ると思ってしまった。
いつか再会して、謝って、それから⋯⋯。
高校卒業した時はさ、大学出て大人になってからって。
就職した時、輝明は才能発揮して脚光浴びて俺は気後れした。だからニ・三年経って自立出来た時にって。
忘れられてるかもしれない、とっくに他に良い人出来てるかもって思いながら、離れて十年経つまでには、何がどうあろうと⋯⋯」
ひたすら話していた声が途切れた代わりに、佑斗の目から涙が零れ落ちた。
(佑斗の事が好きで、どうしょうもなくなりあの街から逃げ出した。やっぱり気持ちバレていたんだ。でも佑斗は佑斗なりに向き合おうとしてくれていた)
僕は佑斗の指摘も独白も涙も、昔のまま上手く何も言葉一つ返せず呆然とするだけで。
「間に合わなかった⋯⋯」
小さな声でぽつりと呟いた佑斗の言葉の意味が分からない。
ただただ感情が溢れ出して今でも愛しい人の涙に手を伸ばしたけれど、拭えなかった。
「なんだ、これ」
「死んじゃったんだ、俺。この間」
実感の無い掌を項垂れ見つめている俺に、理解出来ない言葉が降ってきた。
さっき泣いていた佑斗が、また精一杯の笑顔を向けてくれている。
「まあ、俺らしいっちゃー俺らしいよな。
消息断たれて行方知れずで困ってたけど、唯一良かったと思った。俺の式で輝明が泣く姿見たくなかったから。
お前が何してるかは予想して追ってたけど、住んでるところだけは分からなかった。それがあっちからは簡単に探してスイスイ会いに来れた!
いやー乗り物で来たし、バルコニーから入ってこれたんだけど、突然窓から侵入したら、輝明が失神するかなって。だからわざわざエントランスから正攻法で来た。でもそのお陰で、俺の声覚えてくれてることも、突然どうやって来たかも分からないのに家に入れてくれたことも実感できて、すんげーよかった!」
今日は信じられない出来事の連続で、全て夢かと疑うことばかりで。
佑斗に問い詰めたくて積もり積もってたけれど、一番聞いた信じられない,信じたくない話は、佑斗の様子を見て、疑う気持ちが消え失せてしまった。



