羞恥と驚嘆の波に飲まれ、僕は膝から崩れ落ちた。
 
「僕、鼻歌、」
「良く歌ってたよ」
「そんな独り言みたいなの、なんで覚えて」
「だって、どれもすんげー良い曲だったもん。耳に残るって。
後悔してたことの一つ。なんで輝明に感想言わなかったんだろうって。でも、無意識を気付かれてやめちゃうかもと思ったしなー」

「こ、このことは?」
「思ったのは結構前からだけど。俺が勝手に推理して予想してただけで、誰にも言ってないから、安心して」
「よかった⋯⋯」
「知られてなくても、同窓会にも絶対来ないだろ? 今までも。これからも」

 僕はしゃがみ込んだまま大きく頷いた。
 地元に帰る気はない。

「だって、原因はそれじゃないもんな」

 意味深な問いかけに仰ぎ見ると、佑斗から笑顔が消えていた。

「ずっと前から本当は気付いてた。輝明が俺の事好きだって。その所為、だろ?」

「冗談何言って⋯⋯ち、違うに決まって、
あんな不便な田舎、こりごりだし!
ずっと陰キャで良い思い出何にもないし!
親も離婚して戻る家もないし!
唯一大好きだったばっちゃんもう住んでないし!
それに⋯⋯っ」

「自惚れんな!」と佑斗に向かって振り上げた拳が空を切り、僕は床にダウンした。