八月半ば。帰省ラッシュで渋滞のニュースを耳にしながら作業をしていたら、インターホンが鳴った。
 訪問を告げる音、記憶を探っても身に覚えがない。
 出前は頼んでない。宅配の到着予定もない。それ以外この部屋を訪ねる者はいない。誰にも教えていない場所だから。
 勧誘か間違いだろうと決め無視をすることにしたけど、電子音が鳴りやまない。

「もぉ、クソッ」

 暴漢,強盗だったら怖いけどエントランスの監視カメラに映っているだろうし、今この煩い行為を断ち切る為に、僕は重い腰を上げた。

「はい。どなたですか」
 
 通話ボタンを押し、画面を凝視したけれど、誰もいない玄関が映し出されているだけだ。
 悪戯した奴が逃げたのか? 腹が立つ。終了ボタンを押そうとした瞬間
 
「輝明! オレオレ!」

 詐欺の枕詞をいわれたのに、僕は開錠した。