櫻楽と再会できるまで、残り一か月を切った。状態としては、あまり良くはないが、風雅先生が付き添い、管理をすれば、東京で一泊することも問題ないとされた。仮に、許可できないと言われていたら、あとはもう死ぬだけだから、無理してでも東京に行って櫻楽と会うと言うつもりだった。それだけ、僕は必死なのだ。
病室でスマホを触っていたとき、櫻楽からメッセージが届いた。実に、八年ぶりのこと。久しぶりの感覚に、指先が震える。
「よぉ、元気してるか?」
第一声がそれかよ、とは思いつつ、僕は「まあまあ」と返す。
「無事に、研修医時代も終わりを迎えられる。皇叶、東京に、会いに来い」
上から命令かよ。
「いいけど、いつ?」
「二月の最終週。土曜、日曜の二日間」
「風雅先生には、確認した?」
「してる。それに、皇叶の今の状態も聞いた。よく、頑張ったな」
「あっそ。じゃあ、いいよ。行く」
「ありがとな。プランはこっちで決めるから、とりあえず来てくれ」
「わかった。じゃ、また」
メッセージのやり取りは、ものの五分程度で終了。後に、風雅先生が病室に来て、「櫻楽から聞いたか?」と、問診ついでに尋ねた。
「聞いた」
「ようやく、あの時交わした約束を、実現させるときがきたんだな」
「……」
「どうした、元気ない?」
「こんな僕の姿見て、櫻楽、どう思うかなって」
「……それは、気にしないでいい。櫻楽は、どんな皇叶だって、受け容れる。俺の弟だ。断言できる」
「そ。じゃあ、安心」
看護師が、風雅先生に小声で何か話しかける。
「明日、また来たときに話そう」
「うん」
病室を出て行った風雅先生と看護師。僕は、今度は姉にメッセージを送る。毎日のようにやり取りしているから、何の新鮮味もない。
「二月の最終週の土日、東京行ってくる。ちゃんと、風雅先生が付き添ってくれる。それに櫻楽も、研修医終えるって言ってたから、大丈夫」
「そう、よかったじゃん。楽しんできなよ」
「うん。お姉ちゃんも、菅野さんと仲良くね」
「言われなくてもわかってるし、仲良しです」
子犬が怒っているスタンプを送ってきた。菅野さんと一緒になってから、姉は随分と明るくなった。少しだけメイクするようになったし、将来のことを考えているらしい。
「明日、お見舞いに行くから。健道さんと」
「待ってる。じゃあね」
病院生活も、残り、あとわずか……になるだろう。一日一日を、大切に生きようと思った。
病室でスマホを触っていたとき、櫻楽からメッセージが届いた。実に、八年ぶりのこと。久しぶりの感覚に、指先が震える。
「よぉ、元気してるか?」
第一声がそれかよ、とは思いつつ、僕は「まあまあ」と返す。
「無事に、研修医時代も終わりを迎えられる。皇叶、東京に、会いに来い」
上から命令かよ。
「いいけど、いつ?」
「二月の最終週。土曜、日曜の二日間」
「風雅先生には、確認した?」
「してる。それに、皇叶の今の状態も聞いた。よく、頑張ったな」
「あっそ。じゃあ、いいよ。行く」
「ありがとな。プランはこっちで決めるから、とりあえず来てくれ」
「わかった。じゃ、また」
メッセージのやり取りは、ものの五分程度で終了。後に、風雅先生が病室に来て、「櫻楽から聞いたか?」と、問診ついでに尋ねた。
「聞いた」
「ようやく、あの時交わした約束を、実現させるときがきたんだな」
「……」
「どうした、元気ない?」
「こんな僕の姿見て、櫻楽、どう思うかなって」
「……それは、気にしないでいい。櫻楽は、どんな皇叶だって、受け容れる。俺の弟だ。断言できる」
「そ。じゃあ、安心」
看護師が、風雅先生に小声で何か話しかける。
「明日、また来たときに話そう」
「うん」
病室を出て行った風雅先生と看護師。僕は、今度は姉にメッセージを送る。毎日のようにやり取りしているから、何の新鮮味もない。
「二月の最終週の土日、東京行ってくる。ちゃんと、風雅先生が付き添ってくれる。それに櫻楽も、研修医終えるって言ってたから、大丈夫」
「そう、よかったじゃん。楽しんできなよ」
「うん。お姉ちゃんも、菅野さんと仲良くね」
「言われなくてもわかってるし、仲良しです」
子犬が怒っているスタンプを送ってきた。菅野さんと一緒になってから、姉は随分と明るくなった。少しだけメイクするようになったし、将来のことを考えているらしい。
「明日、お見舞いに行くから。健道さんと」
「待ってる。じゃあね」
病院生活も、残り、あとわずか……になるだろう。一日一日を、大切に生きようと思った。



