夏休み明けから、明らかに欠席回数が増え始めた。誰にも頼れない僕のままだったら、とっくに夢を諦めて、中退していただろう。けれど、今の僕は、一皮も、二皮も向けた男になっている。そう簡単に諦めたりしなくなったし、友人を思い遣る心を、恥ずかしながら今頃ようやく知れた。高校に入学して、色々と楽しいことはあったけど、一番は、やっぱりいい仲間に出会えたこと、今まで注いでくれた恩恵を、今後の生活の中で返していかなければ。
「皇叶、中間試験受けにくる?」
「まぁ、多分行けるというか、行かせてもらおうと思ってる。でもさ、いい点数は望めないな、ハハハ」
「また点数で勝負する? 皇叶が良ければだけど」
「いいよ。負ける自信しかないから」
「えぇー、俺だって負けるのは。絶対皇叶に負ける」
「何でだよ、和久。僕より勉強してるんだろ? 僕のほうが負けるって」
「そこ、張り合うところじゃないだろ」
「確かに。康平、ナイスツッコミ」
「いや、ツッコミじゃないから」
友達とテレビ電話をすること自体、今頃になってようやく慣れてきた感じだった。最初は恥ずかしさが強すぎて、ただ三人の会話を聞くだけで終わっていたのに。
「とりあえず、次、会えるなら、試験のときだと思うから」
「わかった。待ってるからな」
「一緒に頑張ろう、皇叶」
「ありがと」
「へへーい、皇叶、俺とビリ対決、しような!」
「そうだな。楽しみにしてる」
「それじゃあ、今日はこの辺で」
みんなで手を振り合って、電話が切れた。瞬間、部屋には一人なんだという寂しさが募る。
康平が送ってくれる各教科のノート写真。見ながら、書き写す。赤点にだけはならないよう、勉強はしている。
そろそろ部屋に戻ろう。そのとき、向かい側から颯爽と歩いてくる、風雅先生と目が合った。片手を挙げる。
「おぉ、皇叶。もう電話終わったのか?」
「テスト前だし」
「そっか。テスト受けるって言ってたけど、問題なさそうか?」
「一日二教科だし、大丈夫。風雅先生はどう思ってる?」
「まぁ、担任の先生には掛け合ってはみるけど、良い答えは期待しないほうがいい。入院中ってなってるんだし」
「それなら、それ。とりあえず、受けに行くから」
「そ。わかった」
「じゃ、勉強してくる」
「無理すんなよー」
手を振って、個室に戻る。
退院の目途は、今のところ立っていない。大部屋でもいいと言ったけど、風雅先生は個室を用意してくれた。しかも角部屋。景色の良さはまあまあで、でも、車の出入りを見ることができるから、その点は気に入っている。それに、電話スペースと病室が目と鼻の先にあるから、楽。まだ三人は見舞いに来ていないが、テストが終われば来ると言っていたから、それを何気に楽しみにしている。
姉は週二日、仕事が休みの土日に来てくれる。病室だけど、自宅と変わらない空気間が流れるから、いつもリラックスしている僕。姉は心配しつつも、優しく見守ってもくれる。母と二人暮らしだったら、と思うとゾッとするほどに。
「皇叶、中間試験受けにくる?」
「まぁ、多分行けるというか、行かせてもらおうと思ってる。でもさ、いい点数は望めないな、ハハハ」
「また点数で勝負する? 皇叶が良ければだけど」
「いいよ。負ける自信しかないから」
「えぇー、俺だって負けるのは。絶対皇叶に負ける」
「何でだよ、和久。僕より勉強してるんだろ? 僕のほうが負けるって」
「そこ、張り合うところじゃないだろ」
「確かに。康平、ナイスツッコミ」
「いや、ツッコミじゃないから」
友達とテレビ電話をすること自体、今頃になってようやく慣れてきた感じだった。最初は恥ずかしさが強すぎて、ただ三人の会話を聞くだけで終わっていたのに。
「とりあえず、次、会えるなら、試験のときだと思うから」
「わかった。待ってるからな」
「一緒に頑張ろう、皇叶」
「ありがと」
「へへーい、皇叶、俺とビリ対決、しような!」
「そうだな。楽しみにしてる」
「それじゃあ、今日はこの辺で」
みんなで手を振り合って、電話が切れた。瞬間、部屋には一人なんだという寂しさが募る。
康平が送ってくれる各教科のノート写真。見ながら、書き写す。赤点にだけはならないよう、勉強はしている。
そろそろ部屋に戻ろう。そのとき、向かい側から颯爽と歩いてくる、風雅先生と目が合った。片手を挙げる。
「おぉ、皇叶。もう電話終わったのか?」
「テスト前だし」
「そっか。テスト受けるって言ってたけど、問題なさそうか?」
「一日二教科だし、大丈夫。風雅先生はどう思ってる?」
「まぁ、担任の先生には掛け合ってはみるけど、良い答えは期待しないほうがいい。入院中ってなってるんだし」
「それなら、それ。とりあえず、受けに行くから」
「そ。わかった」
「じゃ、勉強してくる」
「無理すんなよー」
手を振って、個室に戻る。
退院の目途は、今のところ立っていない。大部屋でもいいと言ったけど、風雅先生は個室を用意してくれた。しかも角部屋。景色の良さはまあまあで、でも、車の出入りを見ることができるから、その点は気に入っている。それに、電話スペースと病室が目と鼻の先にあるから、楽。まだ三人は見舞いに来ていないが、テストが終われば来ると言っていたから、それを何気に楽しみにしている。
姉は週二日、仕事が休みの土日に来てくれる。病室だけど、自宅と変わらない空気間が流れるから、いつもリラックスしている僕。姉は心配しつつも、優しく見守ってもくれる。母と二人暮らしだったら、と思うとゾッとするほどに。



