体育祭前となると、体育の授業も波乗りする。運動が取り柄の奴とか、とにかく、目立ちたがり屋な奴にとっては、自分が人前で輝ける行事。勉強が取り柄の奴とか、目立ちたがり屋じゃない奴にとっては、マジで要らない行事だ。
僕は、小学校低学年の頃は、前者に近い位置に立っていた。けど、今は後者でしかない。年々、体育祭が、と言うよりも運動することが嫌になっていく。だから、勉強に逃げる。
「今日の授業もダンスの練習を行います。前回見えてきた課題を各自意識して、練習に臨むように」
「はーい」
生徒たちは立ち上がり、それぞれの立ち位置目指して、歩を進める。俺はその集団から抜け出して、ステージの上に向かう。体育教員が置いているCDデッキの電源を入れ、ダンスで使う有名アーティストのCDを入れ込む。
「だらだらしない」教員の注意を聞かない男子が二人。俺のほうを見ながら、ニヤニヤと薄気味悪く笑う。
「あっれ~、梅沢って、どこで踊ってんだっけ~」
「馬鹿、梅沢は高みの見物してんだよ~、足立」
「あ~、そ~でした、そ~でした。ギャハハハ」
視線をデッキに移す。指は既に再生ボタンを押しそうになっている。
「ほらそこ、早く並んで」
教員に注意された男子二人は、そそくさと後方の列に並んだ。割と近くにいる女子三人が、俺とは視線を合わせずにひそひそと離し、静かに笑い合う。
「じゃあ、かけます」
再生ボタンを押す。まあまあな音量で流れ出す音楽。僕を除いた一年生たちが、揃ってもいない踊りを見せる。ダンスとも言えないほど、切れの悪さ、やる気を感じられない動き……。これを、休憩を挟みながら何回も踊る。俺はそれを、先生の「今日の授業は終わり」という合図があるまで、何回も見続けなければならない。
しかも厄介なのは、曲が終わるその度に、僕はリーダーである、女子生徒に意見を求められること。そこの列が揃ってない、とか、やる気のない人が見え見えだ、とか、見たまんまのこと(上から目線の指示、と他人からそう言われた。そんなつもりはない)を言えば、リーダーを含めた、色んな人から反感を買うし、そうかと言って、揃ってた、とか、キレがあった、とか、適当なことを言うと、嘘を言わないで、問題点を指摘して、と散々なことを言われ、リーダーの下につく女子数名から「ちゃんとして」と責められる。どっちに転がっても、俺が褒められることはないし、感謝されることもない。
「みんな、そんなんじゃ、保護者の方も地域の方もがっかりするから、しっかり踊って。特に男子! みんなやる気なさすぎだよ。逆に、ちゃんと踊ってる男子のほうが、悪目立ちしてるんだから」
「はいはい」
「もう一回、頭から通して踊るからね」
「はーい」
「梅沢、音楽」
俺は、なぜ同級生から命令されなければならないのだろうか。再生ボタンを押す。同じ曲が流れ始めた。
僕は、小学校低学年の頃は、前者に近い位置に立っていた。けど、今は後者でしかない。年々、体育祭が、と言うよりも運動することが嫌になっていく。だから、勉強に逃げる。
「今日の授業もダンスの練習を行います。前回見えてきた課題を各自意識して、練習に臨むように」
「はーい」
生徒たちは立ち上がり、それぞれの立ち位置目指して、歩を進める。俺はその集団から抜け出して、ステージの上に向かう。体育教員が置いているCDデッキの電源を入れ、ダンスで使う有名アーティストのCDを入れ込む。
「だらだらしない」教員の注意を聞かない男子が二人。俺のほうを見ながら、ニヤニヤと薄気味悪く笑う。
「あっれ~、梅沢って、どこで踊ってんだっけ~」
「馬鹿、梅沢は高みの見物してんだよ~、足立」
「あ~、そ~でした、そ~でした。ギャハハハ」
視線をデッキに移す。指は既に再生ボタンを押しそうになっている。
「ほらそこ、早く並んで」
教員に注意された男子二人は、そそくさと後方の列に並んだ。割と近くにいる女子三人が、俺とは視線を合わせずにひそひそと離し、静かに笑い合う。
「じゃあ、かけます」
再生ボタンを押す。まあまあな音量で流れ出す音楽。僕を除いた一年生たちが、揃ってもいない踊りを見せる。ダンスとも言えないほど、切れの悪さ、やる気を感じられない動き……。これを、休憩を挟みながら何回も踊る。俺はそれを、先生の「今日の授業は終わり」という合図があるまで、何回も見続けなければならない。
しかも厄介なのは、曲が終わるその度に、僕はリーダーである、女子生徒に意見を求められること。そこの列が揃ってない、とか、やる気のない人が見え見えだ、とか、見たまんまのこと(上から目線の指示、と他人からそう言われた。そんなつもりはない)を言えば、リーダーを含めた、色んな人から反感を買うし、そうかと言って、揃ってた、とか、キレがあった、とか、適当なことを言うと、嘘を言わないで、問題点を指摘して、と散々なことを言われ、リーダーの下につく女子数名から「ちゃんとして」と責められる。どっちに転がっても、俺が褒められることはないし、感謝されることもない。
「みんな、そんなんじゃ、保護者の方も地域の方もがっかりするから、しっかり踊って。特に男子! みんなやる気なさすぎだよ。逆に、ちゃんと踊ってる男子のほうが、悪目立ちしてるんだから」
「はいはい」
「もう一回、頭から通して踊るからね」
「はーい」
「梅沢、音楽」
俺は、なぜ同級生から命令されなければならないのだろうか。再生ボタンを押す。同じ曲が流れ始めた。



