僕に青春を教えてくれた恋人  (僕にアオハルを教えてくれたヒト)

 喫茶店に連れ込まれた、あの日の夜、僕は姉と久しぶりに向かい合って座った。風呂に湯が張られていく轟音が床を這って伝わる中、土下座した。
「今まで黙ってて、本当にごめん」
腕が震えた。姉は静かに、「座って、話、聴くから」と言った。
 そして僕は、病気が判明してから今日までの、病気の状態を赤裸々に明かした。櫻楽と遊びに行った日も病気のせいで転んだと、ちゃんと説明をした。姉は終始静かに頷くだけ。けれど、話し終わった最後に、目に涙を浮かべながら、こう声をかけてきた。
「よく頑張ったね」
 この言葉は、姉が正社員としては初めての給料をもらってきた日、僕がかけた言葉と同じだった。目頭が熱くなる。
「お姉ちゃんもね、薄々は気付いてたの。皇叶は私に隠し事してるんだなって。でも、病気になってたとはね……。誰にも頼れなかったから、辛かったんじゃない?」
「だからさ、僕、学校の屋上から、飛び降りようとしたんだ。そのとき止めてくれたのが、櫻楽で。今思えば、馬鹿なことしようとしてたんだな、って」
「そうだったの。ごめんね」
「お姉ちゃんが誤ることはないよ」
「ありがとね、皇叶。これからもお姉ちゃんは皇叶の味方だからね」
「……うん。ありがとう」
「よし、今日は疲れたし、コンビニに走るか」
「うん!」
 こうして姉とちゃんと話し合えたから、今でも良好な姉弟関係が保たれている。母は相変わらずで、家に帰ってこない。母親として失格としか思えないのだ。
「今日の夕飯は、何しようか」
「お姉ちゃんが好きな、トンテキは? それ用の肉、買ってきた」
「お、いいね。どうせお母さん帰ってこないし、二人分の焼いて、今晩食べちゃおうか」
「だね」
 自転車を押す姉。その隣を歩く僕。母親がいなくても、二人でなら、頑張っていける気がした。